研究実績の概要 |
本年度は,相互作用を重視した関わりによって動機づけに変化がもたらされることを実証することであった.年度前半は実験室内で運動課題を実施した.運動課題は,けん玉やジャグリング等の軽運動であった.運動中の動的な動機づけを測定するため,1分間の運動後にパフォーマンスの自己評価を測定し,休憩をはさみ,計5回の測定を実施した.分析の結果,実験中のパフォーマンスは自己評価に影響するが,その自己評価は次のパフォーマンスとは関係がなかった.また,対象者には運動課題終了後に自己評価グラフを作成してもらい,自己評価が下がったときと上がったときの理由を自由記述で実施した.その結果,対象者の記述からは,自己評価の変動がパフォーマンスによるものであることが明らかになった.これらのことから,パフォーマンスに関する記述への助言により介入効果が期待されることが予想された. 年度前半の結果を受けて年度後半は,対象者の動的な自己評価に基づき,二人称的アプローチ(Reddy,2008)やエンパワリングコーチング(Duda, 2013)の考え方を応用した動機づけ指導を行った.動機づけ指導では,二人称的アプローチの考え方を参考にして,積極的且つ柔軟に対象者と関わり共に問題を解決していくことを試みた.具体的には,体育実技の授業の中でエンパワリングコーチングの原則に基づく権限付与型(自律性支援,社会的支援,課題関与)の指導であった.また,回顧的低位性モデリングの考え方を応用し,授業の各回で収集された対象者の自己評価(自由記述,グラフ)を手掛かりに,パフォーマンスに関するフィードバック及び動機づけ指導を行った.介入期間は2か月程度であり,測定も5回程度であったが,最終日の測定時には,対象者全員の実技に対する自己評価が満点(5段階評定)となった.
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