研究課題/領域番号 |
19K11626
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩館 雅子 日本大学, 生産工学部, 准教授 (40409280)
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研究分担者 |
柳澤 一機 日本大学, 生産工学部, 講師 (50712311)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 予測的循環調節 / 背外側前頭前野 / 状態・特性不安度 / 心拍数 |
研究実績の概要 |
【具体的内容】2021年度は(1)2019年度に取得した右手掌握運動に伴う心理・生理データの解析,(2)左手掌握運動に伴う心理・生理データ取得と分析を行った。(1)は,本研究の学術的問いの一つである「安静期の状態不安度と準備期における脳活動および心循環応答との対応」について検討した。具体的には,安静状態での心理評価(STAI)の得点と準備期の心循環反応および脳血流反応(近赤外分光法)を用いて,(a)安静期の状態・特性不安度と準備期の心拍数増加の関連,(b) 安静期の状態・特性不安度と準備期の前頭皮質(DLPFC)の神経活動の関連を検討し,運動実行者が「準備」という心的セットを行う際の「心の状態」が予測的反応にどう影響するかを検討した。その結果,(a)については,特性不安度が低値または高値の場合に心拍数の変化が大きいというU字型の関係がみられた。また,(b)については,特性不安度が高値または低値の場合には脳血流の変動は小さいという逆U字型の関係がみられた。このように,運動前の安静期における特性不安度と準備期のDLPFCの活動および心拍反応が関連した結果から,運動に伴う心理状態と前頭皮質および心臓自律神経活動が連動しながら機能していることを示すことができた。(2)は,左手掌握運動に伴うDLPFCの活動パターンを同定し,右手掌握運動の場合と比較することで,準備・予測に関わるDLPFC活動に対する運動肢の影響について検討することができた。 【意義・重要性】本研究において,(1)については,予測的循環調節に伴う生理反応の個体間に生じる変動に対し,運動実行者の特性不安度(潜在的な心理状態)に影響を受けていることを明らかにした点に意義がある。また,(2)については,準備期に顕著な増加を示す左DLPFC活動の局在性について,運動肢の影響を明らかにした点に意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,2019年度に取得した心理・生理データを使って,本研究で掲げた学術的「問い」を明らかにできるかどうかの検討をした。その結果,①安静期の状態不安度と準備期における脳活動および心循環応答との対応については,限定的ではあるが大筋の目途が立つことが分かった。そして,②運動ストレスの準備期における心拍数増加とDLPFCの非対称的活動の対応,および,③準備期の副交感神経活動の低下と運動後のコルチゾール値の上昇の関連については,2021年度に取得したデータと2019年度のデータを併せて検討することで達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前項で記載したように,2019年度と2021年度に取得したデータを用いて成果物としてまとめる作業を進め,2022年度内に論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,2020年度から引き続くコロナウイルス感染症予防措置としての緊急事態宣言の発令により,大学への学生の入構制限措置がなされ,実験の実施が予定通り実施できなかったこと,および,実験データの取得に時間を要したため,成果物としてまとめることが困難であったためである。2021年度に予定していた成果物としてのまとめを2022年度に行う予定である。
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