研究課題/領域番号 |
19K11627
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野口 穂高 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (60434263)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 野外教育 / 林間学校 / 身体虚弱児童 / 富山県 / 地域性 / 野外における教育 |
研究実績の概要 |
2021年度は、各地の野外教育実践に関する資料調査を継続するとともに、収集資料の分析を進めた。調査では、昨年度に引き続き、野外教育の書籍、新聞・雑誌記事など、各地の野外教育の概要や実践の状況が記載されている史料の収集を重視し、現在も継続している。とりわけ、一定数の資料収集を済ませていた富山県内の状況について、明治期から大正期への発展や連続性に注目して分析を実施し、学会で発表した。具体的には以下の点が明らかになった。 明治期の富山県においては、学校行事の発展に伴い、遠足運動、校外教授などの「野外における教育」が実施されていた。とりわけ明治30年代後半には、校外教授・修学旅行などが量的発展を遂げ、水泳や夏期の学校召集も実施されるなど、大正期の「林間学校」のプログラムを構成する種々の活動や類似する活動について、一定の経験の蓄積がなされていた。1921年には、県により補助金が支出され「林間学校」の試行的実施に至る。ただし、前年には地元紙に「林間学校」実施を求める記事が掲載されており、補助金の支出以前から需要があったことも窺える。また、市内の各小学校では、夏期休暇中の各種の教育活動が展開されていた。富山市では、明治期からの「野外における教育」活動の経験や、これら大正期の夏期休暇中の野外での教育活動など各種の実践的基盤をもとに、試験的な「林間学校」を実施したと考えられる。これらの活動状況は、『富山日報』等の地元紙や教育雑誌において詳細に報告がなされ、成果が地域内で広く共有されている。そして、22年度以降は市内で多数の「林間学校」が実施されるなど量的にも増加した。以上のように、1921年の試行的な実践は、市内の「林間学校」や野外教育の発展の契機となったと考えられる。 この他、本研究における明治期の研究成果もふまえて、昭和初期の東京市における「林間学校」について分析し、論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により出張を伴う調査が制限される状況が継続し、本年度も資料収集に支障をきたしたため。特に他府県への出張が難しく、全国各地における資料調査が必要な本研究の遂行に遅れが生じる結果となった。 一方で、オンラインによる資料収集を継続し、一定の資料の収集と分析も進んだため、「やや遅れている」との自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も、これまで収集した個別実践や地域に関する史料の分析を継続する。また、これら個別実践についての研究成果を比較史的に分析し、明治後期の野外教育施設・実践について総体的な特色や意義、歴史的な限界を明らかにする。その他、本研究を発展させる研究課題(課題番号:22K11688)も科学研究費助成事業に採択されたので、両課題を連携させながらさらに研究を進める。 なお、コロナ禍により現地での調査が難しい状況は現在も続いている。ただ、本年度は資料調査や出張に関する制限が緩和されつつある。今後は、感染の拡大状況などに留意しながら、現地調査を実施する。また、各図書館や文書館が公開している電子資料などを用いて、可能な限り資料収集を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、各地の野外教育実践に関する資料調査を継続するとともに、収集資料の分析を進める予定であった。ただし、20年度と同様に、21年度もコロナ禍により出張を伴う調査が難しく研究に支障が生じてしまった。このため研究期間を延長し、22年度に対象地域での資料調査を実施したうえで研究課題の総括を進めることとした。 また、先述のように、本研究課題を発展させ対象地域を拡大した研究課題も採択されているため、両課題の資料調査を並行して実施するとともに、これらの調査の成果を連携させながら分析を進める予定である。
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