研究課題/領域番号 |
19K11632
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
宮川 健 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (70279008)
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研究分担者 |
枝松 千尋 倉敷芸術科学大学, 生命科学部, 准教授 (80351948)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / ストラテジー / 高齢者 / 水平外乱 / 繰り返し刺激 |
研究実績の概要 |
2019年度は、ヒトの静止立位における姿勢制御のための方略、すなわち足関節の筋群を中心としてバランスを維持する方略(足関節方略)、股関節を支点として大きく体幹を運動させることでバランスを維持する方略(股関節方略)、片足を前後左右に踏み出すことで支持基底面の面積を大きくしてバランスを維持する方略(ステップ方略)、これら3つの方略に着目し、高齢者と若年者の姿勢保持動作の違いを定量的に明らかにした。これらの結果は、高齢者において 立位時の姿勢の乱れが転倒へ移行する機序を解明する手がかりになると考えられた。2020年度は、転倒予防のための高齢者特有の姿勢制御の方略は、高齢者自身の神経系あるいは骨格筋系などの身体の機能強化によって変化するか否かについて検討した。静止立位の高齢者に対して、1日に一度、一週間連続で水平外乱刺激(予告なしでの床面移動)を与え、その際の姿勢保持動作が連続刺激の前後でどのように変化するかについて三次元動作解析システムを用いて定量化した。その結果、床面前方移動(後方ステップ動作)では滞空時間が短くなり、床面後方移動(前方ステップ動作)では頭頂、肩峰、腸骨棘の変位量と体幹傾斜角度が小さくなった。後方ステップ動作ではステップ時間は短時間で行えるようになり、前方ステップ動作にでは上半身の動揺が小さくなったことを意味している。以上のことから、定期的な繰り返し刺激は外乱発生時の姿勢保持動作を円滑に実施するために効果的であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度と同様に新型コロナウイルス感染症対策の関係で計画をしていた実験が未実施のものがある。可能な限り密な状態とならないよう配慮し、実験・測定を実施する予定である。ただし少しでも被験者が不安を感じるようであれば、研究結果にも影響を及ぼす可能性があると思われるので、ある程度は新型コロナウイ ルの感染状況が縮小するのを待って実施いたいと考えている。実験・測定が休止している期間には、これまで実施した実験・測定についてさらに考察をすすめると共に、姿勢制御に関連する最近の研究について理解を深めることとする。
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今後の研究の推進方策 |
体力要素と姿勢制御方略との関連性、ならびに短期的な身体運動の実施が姿勢制御方略に及ぼす影響について、これらを明らかにする実験が未実施である。まずは、課題対象者全員について、新体力テストならびに重心動揺検査、脚伸展屈曲筋力(等尺性筋収縮,等速性筋収縮)の測定を実施し、それらの体力要素と姿勢保持動作結果との相関関係を分析する。次に、水平外乱刺激による姿勢保持動作が疲労状態によってどのように変化するかを定量的に分析する。通常の姿勢保持動作測定の後に、毎分90mの速さで5分間ウォーキングを行わせる。ウォーキング直後に再度水平外乱刺激による姿勢保持動作測定を実施する。測定終了後、さらに同速度にて10分間 ウォーキングを行わせ、再度姿勢保持動作測定を実施する。これらの結果から運動前後の姿勢制御方略について検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大予防対策のため、予定していた実験が未実施である。このための、被験者への謝礼金ならびに実験での消耗品費用等については2021年度にまわすこととした。また2021年度経費については、国際学会ならびに国内学会への参加経費(コロナの状況によってはオンライン)、実験で得られる動画データ処理のためのコンピュータおよびアプリケーションの購入を予定している。
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