研究課題/領域番号 |
19K11633
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
徳永 隆治 安田女子大学, 教育学部, 教授 (60310843)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 児童相互の伝え合い / 学習過程における集団思考場面 / 観察視点の絞り込み / 教師の問いかけ / 児童の自己課題 |
研究実績の概要 |
科研費補助金を受けての体育科授業研究3年目、研究推進計画の最終年度であった。本年度も感染症対策のために小学校体育科授業の参観・収録が制限されたが、広島県内3小学校での授業参観・収録が出来た。その授業分析を加味しながら昨年度授業観察した広島市立B小学校2学年ゲーム領域の授業分析を進め、その結果を日本体育・スポーツ健康学会で口頭発表(オンライン)すると共に、安田女子大学紀要第50号に投稿した。一連の研究は小学校体育科授業において児童の「伝え合い」の内容に着目し教師の活動の在り方を事例的に追究したものである。 授業分析から、本時の指導目標・内容に直結する児童の「伝え合い」を育成する授業づくりとして、児童の課題意識を明確にする「示範・観察、話し合い」の学習場面(集団思考場面)の有効性、そこでの学級全員及びグループや個別児童への教師の問いかけが児童の意識を方向づけている実態を明らかにし、教師の活動の重要性、特に発問が今後の体育科授業研究の課題であることを見出した。 学習過程に集団思考場面を設け、発問を介して児童に本時指導目標に沿った自己課題を明確に意識させることができれば、児童の伝え合う内容が質的に高まり、同時に、目立たない児童の発言が増えるなど学習活動に変化が見られる。そのためには集団思考場面における示範児童の選出、示範が有効に機能するために示範児童への指示・助言、観察する児童への観察視点の絞り込みが教師の活動として不可欠であると結論付けた。 また、発問の内容が児童相互の問いかけ及び伝え合いに反映することが確かめられ、本時の指導のねらいに迫る教師の発問によって児童の思考・判断が促進され、自己課題が意識されると共に、その結果として「伝え合い」が本時学習の深化につながり、学習が本時目標の達成に向けて質的に高められると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小学校体育科授業を観察・収録し分析する研究計画で研究主題を追究している。2020年度の授業分析の結果から「伝え合い」を引き出す学習過程や児童への教師の問いかけの有効性が見出されたものの、対象とした授業とは異なる学年及び運動領域の授業において同様の結果が見られるかが課題となり、多くの授業分析が不可欠となっている。しかし、小学校の現場においても新型コロナウィルス感染防止対策が継続される中、2021年度の授業観察・収録が計画通りに進められなかった。その点で研究の推進に遅れを認めざるを得ない。 しかし、新たな授業の観察・収録が進まない中にあって、2020年度内に観察・収録し終えていた授業の分析を進めると共に、2021年度に開催された体育科公開研究会に関わる授業参観によって、児童相互の「伝え合い」を引き出す学習場面の設定と教師の問いかけの有効性を複数の授業で確かめることができた。2020年度の研究成果に上積みができると共に、本研究テーマに関わって新たな視点が見出された。課題意識を児童自身が明確に持つことにより、児童相互の「伝え合い」が引き出されること、そして、児童の明確な自己課題を持ったうえでの他者へ伝える行為が、本時目標の達成に直結するのではないかということである。この視点が研究の深化をもたらすと考えられ、本年度の研究に一定の前進がみられたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに広島県内3小学校での授業観察・収録を中心に公開研究会及び校内研修会での授業参観の結果を加味して、研究テーマに関わる一定の知見を得ることができたが、その研究対象とした授業事例とは異なる学習内容(運動領域)や他学年においても同様の結果が見出せるか、多くの事例研究を踏まえて一般化を図ることが継続した研究課題の一つである。 また、これまでの授業分析から新たに見いだされた課題である、教師の発問の内容が児童の「伝える」活動の質を高めることを事例的に確かめていくこと、さらに、教師の問いかけの内容及び発問の場面と児童の「伝える」活動の活性化の関連について授業の分析を進めていきたい。 以上の結果をもとに本研究のテーマである「伝える力」の育成と教師活動の在り方について、小学校体育科授業から事例的に見いだされたことを授業づくりのための一定の知見としてまとめたい。2021年度が科研費補助期間の最終年度であったが、授業参観が予定通りにできていないことから2022年度に1年間の研究期間延長を申請したところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も前年度に引き続き、学校現場で新型コロナウィルス感染防止対策が継続され、予定の授業観察が計画通りに実施できなかったため、2022年度に複数の小学校を訪問し、体育科授業の観察・収録を実施の予定である。また、2020年度・2021年度は研究成果の発表のための関連学会がオンライン実施となった。2022年度は対面での開催が予定されており、参加し口頭発表する予定である。それらの旅費等の予算執行に加え、授業分析のためのアルバイト雇用が困難であることから、代替措置として授業中の音声を言語に変換するためにAIライティングコーダーの追加購入を予定しており、物品費の予算執行を予定している。
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