研究課題/領域番号 |
19K11637
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高野 由美 東北大学, 大学病院, 助手 (10814361)
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研究分担者 |
舘脇 康子 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (40722202)
武藤 達士 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (80462472)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者 / 骨粗鬆症 / アルツハイマー病 / 脳 / DXA / MRI / SPECT / 骨密度 |
研究実績の概要 |
高齢者の骨粗鬆症では、大脳楔前部の灰白質体積と大腿骨頸部の骨密度に有意な相関を示すことが、研究代表者らの予備検討で得られている。予備検討では、MRI(Magnetic Resonance Imaging)で脳の局所灰白質容積を計測。DXA(Dual-energy X-ray absorptiometry)を用いて大腿骨頸部の骨密度を測定。年齢、性別、全脳容積とMMSE(Mini Mental State Examination)の結果で補正した重回帰分析で、骨密度の低下と、アルツハイマー型認知症で障害を受けやすい重要な神経ネットワークのハブである左楔前部の局所灰白質容積に有意な相関がみられた。昨年度は、低骨量状態と診断された高齢女性に対象を絞り、脳血流SPECT(Single-photon emission computed tomography)とDXAの検査を行った。対象者をアルツハイマー型認知症群と非認知症群に分けて、低骨量状態と局所脳領域との関連について検討した。その結果、62局所脳領域のうち、早期のアルツハイマー型認知症で影響を受ける領域を中心とした14の局所脳領域で、アルツハイマー型認知症群では、非認知症群と比べて有意な局所脳領域の血流量の低下を認めた。年齢層別の多変量回帰分析では、左後部帯状回の局所脳領域の血流低下が、低骨量状態の独立した予測因子であった。骨密度と左後部帯状回の局所脳領域の血流との関係は、全対象者、アルツハイマー型認知症で顕著な相関がみられた。これらの結果から、低骨量状態が、アルツハイマー型認知症に関わる脳内ネットワークの神経変性に何らかの関与をしている可能性が示唆された。本年度は、得られた結果をもとに、論文化し、国際学会での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳MRIと脳血流SPECTを用いた脳画像と、DXAを用いた骨密度の測定を行い、骨密度の低下と脳の局所領域の形態変化や血流の変化に相関性があることが確認された。新型コロナウイルスの感染拡大により、新たなデータ採取が困難な状況となり、さらに学会の中止や延期も相次いだことから、思うようには進展しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
脳の局所領域と骨密度との関係については明らかになりつつあるが、直接的な関係があるのか、何らかの介在因子があるのかについては明らかではない。アルツハイマー病、骨粗鬆症の双方で変化するホモシステインなどの血液データを再度解析に含めて、関連を明らかにしていく。また、骨微細構造についても検討が不十分であり、超音波骨密度計などを用いて骨質についてもデータを収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大のため、新規データ取得の規模が縮小したこと、海外を含め学会などの出張が皆無になったため、旅費や人件費が縮小された。次年度使用額は、骨密度だけでなく、骨質を評価する機器の購入費などに充てる予定である。
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