【目的】小児における肥満症および脂肪性肝炎と、セルロプラスミンの合成に関与する遺伝子の異常の関連を検討する。 【対象および方法】肥満、肝機能障害のために当院通院中であり、血清セルロプラスミン値が低値である症例を対象とした。しかし当初想定していた患者はコロナウイルス感染拡大のため受診することができなかった。そのため、想定していた患者以外でもセルロプラスミン低値である患者、さらには原因不明の肥満、肝機能障害症例も解析対象とした。対象患者およびその代諾者へ研究内容を説明し、書面にて研究同意を取得した。日常診療の血液検査で得られた全血検体および血清検体を実験日までマイナス30℃の冷凍庫にて保管した。1.遺伝子抽出および解析:全血は室温へ復帰させたのち、KIAGEN社のQIAamp DNA Blood Mini Kitを用いて、取扱説明書通りに作業した。得られたDNA検体の精度は吸光度計にて良好である事を確認した。遺伝子解析は、当院に設置されている次世代シークエンサーシステムを用いた(サーモフィッシャーサイエンティフィック社Ion Chef System、Ion PGM System)。2.遺伝子ライブラリー作成:以下の遺伝子を含むライブラリーを作成し、解析をおこなった。PANK2、PLA2G6、CP、ATP7B、LIPA 【結果】解析対象は4名。内訳は、血清セルロプラスミン値が22mg/dlと正常下限の男性患者1名、3名は30-40mg/dlと正常範囲の患者3名(男性1名、女性2名)。 いずれの症例においても、PANK2、PLA2G6、CP、ATP7B、LIPA遺伝子に病的変異を指摘できなかった。 【考察および結語】小児の肝機能患者に観察される低セルロプラスミン血症は、無セルロプラスミン血症の責任遺伝子であるPANK2、PLA2G6とは関連ないと思われた。
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