研究課題/領域番号 |
19K11651
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
安達 三美 帝京大学, 医学部, 教授 (10323693)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 老化 / 糖質コルチコイド / 時計遺伝子 |
研究実績の概要 |
我々は、視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA軸)により分泌制御されるステロイドホルモンのひとつである糖質コルチコイド(Glucocorticoid: GC)が、炎症・活性酸素・ミトコンドリアの機能異常・小胞体ストレスに並ぶ、老化の原因を構成する主役者候補であることに注目してきた。これまでに、高齢マウスではGC分泌の日内変動がほぼ消失し、一日を通じて早朝時並みの高い状態が続くことが明らかになった。そこで本研究では、老化マウスの副腎皮質におけるGC産生メカニズムの変化を解析した。まず、我々は、高齢 (OM) vs. 若いマウス (YM) 群の、副腎皮質のGC産生を担う束状帯をレーザーマイクロダイセクションにて単離し、遺伝子発現解析(DNAマイクロアレイ、リアルタイムqPCR)を行った。その結果、GC産生関連酵素の一つであるStARの発現動態が、GC産生と並行して、YMでは早朝に低く、夕方高くなるが、OMでは一日中高いことが明らかになった。StARはGC分泌の日内変動の原動力であると同時に、主要な時計遺伝子の一つであるBMALの制御を受けることが知られている。そこでBMALを含む時計遺伝子群の発現を解析した。BMALはYMでは早朝に高く夕方には低くなるが、OMでは一日中、YMにおける早朝と夕方の中間のレベルにとどまることが明らかになった。また、Per1、Per2、RevErb1発現は、YMでは、早朝と夕方で顕著な違いが見られたが、OMではその差が小さくなった。以上から、(1) OMにおけるGCの日内変動の消失及び分泌増加のメカニズムに、StARが関与する可能性、(2)時計遺伝子群は、老化副腎皮質のGC産生を担う細胞で、YMとOMの間に、日内変動において大きな違いが出現することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス副腎からレーザーマイクロダイセクションを使用して、糖質コルチコイド産生を担う束状帯を単離することは技術的に難易度が高い。そのステップをクリアし、単離した組織からRNAを抽出した後、RT-qPCR及びDNAマイクロアレイにて遺伝子発現解析を行うことに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)加齢によるGCシステムの撹乱におけるBMAL→StARの関与を検証したい。さらに老化副腎皮質における時計遺伝子群の変化のメカニズムにも迫りたい。 (2)GCの撹乱から老化促進へのメカニズムについて検討する。高齢vs. 若いマウス群の、骨格筋、脂肪組織、心臓、肝臓及び肺を用いて、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行い、両群間で共通した発現変動パターンを示す種々の遺伝子を抽出し、解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)レーザーマイクロダイセクションを使用して、マウス副腎から糖質コルチコイドを担う皮質の束状帯を単離する安定した技術を取得するのに時間がかかった。また単離した組織から安定したRNAを抽出する条件検討に時間を要したため。 (次年度における未使用額の使用計画)免疫組織学的解析などを、次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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