研究課題/領域番号 |
19K11654
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
田中 守 中部大学, 応用生物学部, 講師 (00612350)
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研究分担者 |
呂 鋭 中部大学, 応用生物学部, 講師 (80381862)
渡邊 浩幸 高知県立大学, 健康栄養学部, 教授 (30369425)
竹井 悠一郎 高知県立大学, 健康栄養学部, 講師 (10711377)
吉本 好延 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (60627371)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 食用カンナデンプン / Ⅰ型アレルギー / 予防効果 / 免疫機能 / 消化管 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究実施計画として,昨年度の再現性と消化管のバリア機能を制御する小腸のタイトジャンクションと周辺タンパク質発現について検討した。5 週齢の BALB/cマウス(雌)をCA,CC,SA,SCの4 群に分け,4週間飼育した。CA、SA にはAIN-93Gと水,CC,SCには10%をカンナデンプンに置き換えたAIN-93Gと水を自由摂取させた。また,感作群であるSA,SCにおいて,8,22日目に軽く麻酔をかけたマウスの腹腔内に卵白アルブミン(OVA)を含むアルミニウムアジュバントを投与し,感作を行った。一方,非感作群であるCA,CCはOVAを含まないアルミニウムアジュバントを同様に投与した。飼育開始28もしくは29 日目に20 mg/匹のOVAを投与し,評価項目として,(1)血清中OVA 特異IgE (2)OVA投与30 分後の直腸温を指標としたアナフィラキシー症状(3)OVA吸収量(4)OVA投与前3日間に採取した糞を用いて,糞重量,糞中ムチン量,糞中総IgA,糞中OVA特異IgA を測定した。 (1)血清中OVA特異IgEは非感作群と比較して感作群で有意に上昇した。(2)直腸温は非感作群と比較してSAでのみ有意に低下した。一方,SCは非感作群と比較して有意な低下が認められなかった。(3)OVA吸収量は,CA,CC,SAと比較してSCで有意に増加した。(4)糞中総 IgAは群間に差が認められなかった。一方,糞重量,糞中ムチン量,糞中OVA特異IgAはCA,SA と比較してSC が有意に増加した。また,各評価項目における相関関係を調べたところ,直腸温とOVA 吸収量には 強い負の相関(r=-0.946)が認められた。それゆえ,現在,アレルゲン吸収と関係し,腸管バリア機能の中でも上皮細胞間の通過を制御するタイトジャンクションと周辺タンパク質発現について進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに食用カンナデンプンの摂取がマウスの腸内細菌叢改善,腸管免疫機能を改善させることを明らかにしてきた。これらの結果は,消化管からのアレルゲンの取込抑制やアレルギー体質の改善効果が期待されるものと考えられ,本研究では,カンナデンプンのアレルギー症状に対する発症の予防効果について,特に消化管に着目し,Ⅰ型アレルギーモデルマウスを用いて評価検討を行っている。評価項目として,1)アナフィラキシー症状に対する発症の予防効果,2)腸内環境改善効果,3) 消化管におけるアレルゲンの動態観察,4) 消化管における遺伝子の発現と合成されるタンパク質に対する影響等を検討することを計画してきた。2年が経過し,1)2)が終了し,3)4)に関しては検討中である。進捗状況がやや遅れている理由としては,非感作マウスとⅠ型アレルギーモデルマウスの実験結果が必ずしも一致せず,アレルギー体質の影響が個体差に影響していることが考えられ,当初予期していた結果とはなっていないことが挙げられる。一方で,カンナデンプン摂取により,腸内細菌叢改善,腸管免疫機能改善している個体もあることから,これらのマウスの詳細な分析を行うことが課題解決に重要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の進行状況の理由に挙げた課題に加え,今後の研究の推進方策としては,2021年度は,アナフィラキシー症状とアレルゲン吸収に強い負の相関がみられたことから,消化管のアレルゲン取込機構を優先とし,小腸のタイトジャンクションと周辺タンパク質発現,小腸および肝臓の組織学・病理学的評価によりアレルゲンの動態観察に加え腸透過性測定評価を行うことを計画している。小腸のタイトジャンクションについては現在、条件検討を進めているところで,引き続き進めていく。 具体的に小腸のタイトジャンクションと周辺タンパク質発現については,Claudin 1,Claudin 7,ZO-1,Occludinをターゲットとしてウエスタンブロット法および免疫染色によりタンパク質発現の評価を行う。腸透過性については,尿中のラクツロースとD-マンニトールの割合を測定し評価を行う。また,大腸の制御性T(Treg)細胞関連遺伝子発現を明らかにすることを予定していることから,Treg関連遺伝子発現評価は,大腸よりmRNAを抽出してcDNAを作製した後,RT real-timePCR法にて、ハウスキーピング遺伝子としてActinを用い,Treg細胞の転写因子であるFOXP3およびTh2細胞の転写因子であるGATA3の遺伝子発現量を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の未使用額が発生した理由としては,コロナ禍による実験時間の短縮と当初予定していた旅費の利用がなかったことが挙げられる。研究の遅れもあることから,未使用額の使用については,2021年度に今年度分を追加して研究を進めていくことを考えている。
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