研究課題/領域番号 |
19K11655
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
金子 葉子 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (20319263)
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研究分担者 |
長崎 弘 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30420384)
小谷 侑 藤田医科大学, 医学部, 助教 (60644622)
河田 美穂 藤田医科大学, 医学部, 助教 (90761601)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | TNF受容体 / 2型糖尿病 / 血糖値 / インスリン / HOMA-IRインデックス |
研究実績の概要 |
2型糖尿病は多因子性疾患であり、複数の遺伝的素因と環境要因が重なることにより発症する。原因として過食による肥満、高脂肪食(HFD)の摂取、運動不足が挙げられる。脂肪細胞がアディポカインと呼ばれる様々な生理活性物質を分泌することが明らかになり、それらの1つであるTNF-αは、インスリン抵抗性の発症に関与していると考えられる。 TNF-α受容体には2つのサブタイプがある。この研究では、type1 TNF受容体欠損マウス(R1-KO)、type2受容体欠損マウス(R2-KO)、両受容体欠損マウス(D-KO)およびC57BL / 6マウス(WT)を通常食またはHFDで飼育した。摂取したカロリーと体重を8週間測定した。血中のトリグリセリド、グルコース、インスリンの濃度を測定した。 HFDで飼育したR1-KO、R2-KO、D-KO、WTの体重増加率は、それぞれ57.7%、75.3%、73.4%、73.4%であった。 R2-KOとD-KOは通常食でも体重が増加し、それぞれ13.2%と19.6%であった。 HFDにより、R2-KO、D-KO、WTの血糖値は約1.5倍に増加し、インスリン濃度は5倍以上増加した。 R1-KOでは血糖値、インスリン濃度ともHFDと通常食で有意差が認められなかった。インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRインデックスは、HFDで飼育されたR2-KOで35.2、D-KOで40.0、WTで21.0であり、重度のインスリン抵抗性を示すことが明らかになった。D-KOは通常食の飼育でインデックスが4.3と、インスリン抵抗性状態にあることが判明した。これらのデータは、TNF受容体サブタイプに応じてインスリン抵抗性の発症に違いがあることを示唆している。 以上の結果については、第97回日本生理学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TNF受容体ノックアウトマウスからのサンプルの調整はほぼ終了したが、脂肪組織からのRNA、タンパク質の抽出が困難であり、試行錯誤を繰り返したため解析に至るまで時間がかかった。 炎症性サイトカインのRNAの発現はリアルタイムPCRで解析が終了したが、それ以外の肥満に関連した遺伝子、インスリン受容体の情報伝達に関連した遺伝子の解析はまだ終了していない。 タンパク質の解析はさらに難航している。タンパク質量の測定も困難であり、ウェスタンブロッティングでは目的のたんぱく質の検出がうまくいっていない状況である。脂肪組織からのたんぱく質の抽出方法について再考する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
4月から新設の学部に異動したことに伴い、研究室の立ち上げが必要であった。それにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、新しく導入した機器の説明会が開催されないため、機器を使用することができない。また、業者が学内に立ち入れない状況になっているため、研究室の整備が一向に進んでいない。さらに、サンプルや実験に用いる動物が前の勤務先から持ってこられない状況である。 愛知県と岐阜県では緊急事態宣言が解除されたので、研究環境の整備、サンプルの管理や動物の飼育環境を整えるのが最初の課題である。 RNAの抽出は完了しているので、リアルタイムPCRが使用できるようになったら、肥満関連遺伝子、インスリン受容体関連遺伝子の発現を解析する。 TNF受容体欠損マウスのインスリン受容体のリン酸化を解析し、シグナルトランスダクションの違いを明らかにしたい。そのためにウェスタンブロッティングでIRS-1のリン酸化を検出できる条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプル調整に時間がかかり、さらに解析にも時間がかかったため、あまり研究が進まなかったために2019年度の予算を翌年に繰り越すことになった。 2020年は、試薬、プラスチック器具・ガラス器具等消耗品、学会出張費、ポスタープリント代等に予算を使用する予定である。
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