プロテアソームによるアミノ酸プールの恒常性維持に関与する分子機序を解明するために、2021年度は、脂質は一定にしてタンパク質と炭水化物の割合を変化させた3種類の餌と通常使用している餌(CE2)を6ヶ月間マウスに摂取させ、各餌の血液、肝臓、腎臓、脳を採取し、プロテアソームの機能解析を進めた。 その結果、6か月間飼育した場合の臓器に関しては、1)脳と肝臓では、CE2と3種類の餌では、形成された26Sプロテアソームのペプチダーゼ活性には大きな変動が認めらなかった。一方、20Sプロテアソームは肝臓や脳で3種類の餌で飼育した場合、CE2よりわずか増加する場合、低下する場合が認められた。また、どの栄養状態でも、プロテアソームの分子サイズは変化しなかった。以上より、6か月でも2か月同様に摂取するタンパク質含量が異なることにより、26S及び20Sプロテアソームの活性が変動することが判明したことから、プロテアソームの活性は、摂取する栄養素の影響を受ける可能性が示唆された。 各餌で飼育したマウスの肝臓の粗抽出液におけるプロテアソームとその活性化因子のタンパク質の発現解析した。20Sプロテアソーム、Rpt6、Rpn10の蛋白質の発現はほとんど変化が見られなかったことから、栄養素の割合はプロテアソームの各サブユニットの発現には影響がないと考えられる。一方、mTOR、PGC1α、S6K1、4E-BP、Nrf1のタンパク質の発現は差が見られた。 今回の研究からプロテアソームの発現制御機能は栄養状態により影響すると考えられるため、今までに報告した2か月の試料でも同様な解析を進めることにより栄養とプロテアソームとの発現制御機能の解明に繋がる可能性があり、更に検討する必要があると考える。
|