本研究計画では申請者が動物実験で得た知見である「ストレス負荷によって脂質酸化酵素12-lipoxygenase(12-LOX)が活性化し血液中でアラキドン酸酸化物12-hydroxyeicosatetraenoic acid(12-HETE)が増加する」という現象を培養細胞で再現し、12-LOXの活性化メカニズムを解明することを最終的な目的として掲げている。このため、本研究計画では①12-LOX活性化メカニズムの解明、特に12-LOXの細胞内局在変化の分子機構の解明を目指す。その上で、②トコトリエノール等の12-LOX活性抑制の作用機構を同定することを立案している。 2021年度はこれまで動物実験で得られたマウスへのストレス負荷によって血中で12-HETEが増加する現象および、12-HETEがストレスによるパニック様症状に関連しているという12-HETEのストレスにおける生理的意義をまとめた論文を国際誌にて報告した。また、12-LOXと同様に局在変化することで活性化する5-LOXは局在移行・活性化メカニズムはアレルギーとの関連もあるため広く研究されており、詳細が判明している。この5-LOXを大豆イソフラボンであるダイゼインが活性化するメカニズムにおいて5-LOXタンパク質のリン酸化が関与すること明らかにし、関係するシグナル伝達経路を同定した。また、ダイゼインは5-LOXを活性化することでインフルエンザウイルスの増殖を抑制できるが、このインフルエンザ増殖抑制機構を解明するうえで必要なin vitro ウイルスRNA合成量の解析方法に関して国際誌にて報告した。
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