研究課題/領域番号 |
19K11671
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
桑波田 雅士 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (30304512)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CKDモデルラット / アデニン / 小麦グルテン / リシン / 血漿アルブミン還元型比率 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)の重症化に伴い、心血管疾患の合併症発症リスクが高まることが知られている。また、CKD患者では血漿中のアルブミン還元型比率が低下(酸化型比率が上昇)していることが知られており、このアルブミン酸化還元動態が心血管疾患の発症にも影響を及ぼしている可能性について検討することを目的としている。 昨年度の研究では、CKDモデルとして5/6腎臓摘出ラットを使用した。そして対照飼料としての20%タンパク質食に対し、腎臓病患者に対するタンパク質制限療法を想定した低タンパク質(5%)食を給餌し、血漿アルブミン酸化還元動態のほか、病態と栄養状態を評価した。その結果、食事タンパク質が5/6腎臓摘出ラットの血漿アルブミン酸化還元動態に影響を及ぼすことは確認できたが、この試験系では食事タンパク質含有量に関わらず合併症としての心血管疾患を誘発するには至らなかった。 そこで今年度は、CKDモデルとしてアデニン摂取ラットを使用した実験系での検討を開始した。まず試験系を確立するために、実験飼料組成の配分調整やアデニン添加量について検討した。その後、予備実験として各群少数の個体を使用して、カゼインと小麦グルテンをタンパク質源とした低タンパク質飼料の影響を検討した。またこの際、小麦グルテンの第一制限アミノ酸であるリシンを添加した飼料についても併せて評価した。この予備実験の結果、小麦グルテンをタンパク質源とした飼料でも、ある程度の体重維持は期待でき、また心血管疾患の発症に深く関与することが予想される高リン血症の発症を抑制する可能性が認められた。一方、血漿アルブミン酸化還元動態には食事タンパク質源による差が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アデニン添加飼料によるCKDモデルラットの作製を開始したが、腎疾患よりも食事摂取量低下による栄養不良の影響が大きいと判断する結果となり、試験系の確立に時間を要したことが本課題の進捗を少し遅らせた最大の理由と考える。しかし今年度中に試験方法は決定し、本飼育試験も開始した。次年度の最終年度には各種の解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、食事タンパク質がCKD合併症の心血管疾患の発症に及ぼす影響に焦点をあてて検討を進める。今年度からアデニン添加食給餌による飼育試験を開始している。2ヶ月の実験食給餌期間を予定しているが、すでに飼育試験を開始していることから、速やかに実験に取り掛かることが可能である。安楽死後にはさまざまな臓器、組織を採取し、実験に供する。生化学検査や遺伝子発現、ウエスタンブロットや組織科学的な解析は常法に従い実施する。さらに血漿アルブミンの酸化還元動態は研究室で確立しているHPLC法で分析する。全て実績のある実験方法のため、問題無く実験は進められると考える。なお、アルブミン酸化還元動態が循環器系をはじめとする生体に及ぼす影響は、部分精製したアルブミン分子あるいは血漿を培養細胞株とインキュベートすることで評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はCKDモデルラットの作製方法の変更に伴い、薬剤添加量や飼料組成などの検討のために予備的な飼育試験を複数回実施した。その結果、予定されていた生化学、分子生物学的解析や組織科学的解析等、高価な試薬を必要とする実験を開始するに至らなかったことが次年度使用が生じた理由である。次年度は、今年度に予定していた実験がずれ込んだために、当初の予算以上の経費が必要になる。今年度の繰越金も含め、次年度申請分で全ての実験に必要な試薬類を購入する予定である。
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