慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)の重症化に伴い、心血管疾患の合併症発症リスクが高まることが知られている。また、CKD患者では血漿中のアルブミン還元型比率が低下(酸化型比率が上昇)していることが知られており、このアルブミン酸化還元動態が心血管疾患の発症にも影響を及ぼしている可能性について検討することを目的としている。 今年度の研究では、CKDモデルとしてアデニン摂取ラットを使用した。2週間のアデニン摂取によりCKDを誘発させたWistar/ST系雄性ラットを体重、血漿クレアチニン濃度により群分けし、引き続きアデニンを添加した5%カゼイン食あるいは6%小麦グルテン食を15週間給餌した。腎臓病患者に対するタンパク質制限療法を想定したそれぞれの低タンパク質食摂取時における血漿アルブミン酸化還元動態のほか、病態、栄養状態を評価した。 実験飼育終了時の体重は、小麦グルテン摂取群に比較してカゼイン摂取群で高値傾向を示したが有意な差は認められなかった。血漿アルブミン濃度にも両群間に差は認められなかったが、血漿アルブミン還元型比率は小麦グルテン摂取群で有意に高値を示した。クレアチニンクリアランスや腎臓の線維化、血漿リン濃度には両群間で差が認められず、胸部大動脈の石灰化も両群ともに検出することはできなかった。以上の結果から、本研究では血漿アルブミンの酸化還元型比率と腎機能、異所性石灰化との関連は明らかにすることはできなかった。しかしながらCKD病態下においても、食事タンパク質源の違いが血漿アルブミン酸化還元型比率に影響を及ぼす可能性は見出された。
|