研究実績の概要 |
本研究では、血管平滑筋細胞のオートファジー機能低下が糖尿病に特徴的とされる石灰化病変に与える影響に関する検討した。平滑筋特異的オートファジー欠損モデルマウスを作製し、動脈硬化誘発モデルでその機能解析を行った。Atg7f/fマウス(Atg7,隔離膜からのオートファゴソーム形成に関わっているオートファジーに必須の分子である)にSM22-Cretgマウスを交配し血管平滑筋特異的Atg7欠損マウス(SM22-Cre;Atg7f/f)を作製した。平滑筋特異的Atg7欠損マウスおよびコントロールマウスに、ストレプトゾシン4mg/kgを腹腔内に単回投与し、糖尿病を誘発した群(糖尿病平滑筋特異的Atg7欠損マウス、糖尿病コントロールマウス)の計2群のモデルマウスを作製した。これらのマウスに4週間高リン食を負荷し、さらに、4週目にビタミンDであるカルシトールを3日間連続皮下投与し、石灰化を誘導した。各マウスの大動脈弁領域や大動脈の切片を作成し、コッサ染色で石灰化性病変を定量評価した。試験中、糖尿病平滑筋特異的Atg7欠損マウスおよび糖尿病コントロールマウスの群間で摂取量や体重に有意な差は認めなかった。また、血中のリンやカルシウムの濃度にも有意な差は認めなかった。糖尿病状態において、コントロールマウスに比較して、平滑筋特異的ATG7欠損マウスの大動脈弁周囲のコッサ染色陽性面積が増加していた。以上より、血管平滑筋細胞のオートファジー機能低下した状態では、高血糖と高リン血症により平滑筋細胞の石灰化が促進され、動脈硬化が進展する可能性がある。
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