研究課題/領域番号 |
19K11676
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
川崎 広明 昭和女子大学, 生活科学部, 講師 (40531380)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニトロ化トリプトファン / アミノ酸 / 化学修飾 |
研究実績の概要 |
本研究では、食品中の6-ニトロトリプトファンの存在の有無を明らかにした上で、食品由来の6-ニトロトリプトファンが生体の機能に及ぼす影響を解明することを大きな目的としている。2020年度の研究計画では、2019年度に各種食材(獣肉、獣肉加工品、魚肉、乳及びその加工品、豆類およびその加工品、等)から見出した6-ニトロトリプトファンを有する多数のタンパク質種について、これらのタンパク質から6-ニトロトリプトファンが生体内に供給され、生理機能へ何らかの影響を及ぼすかどうかを明らかにする実験を開始した。まず、in vitroの擬似消化系において、2019年度に扱った食材のうちニトロ化が最も顕著であった獣肉1種をサンプルに用い、消化後に生じる遊離6-ニトロトリプトファンの検出を試みた。現在、各種消化酵素で消化後のサンプル中から、抗6-ニトロトリプトファン抗体を用いたELISA法およびHPLC-PDAを用いた方法による検出を試みているが、遊離の6-ニトロトリプトファンの検出には至っていない。今後、検出に向け、各方法の改良を試みる予定である。また、これらの実験と並行して、2019年度中に行った各種食材中の6ニトロトリプトファン含有タンパク質の検出・同定について、LC-MS/MSを用いてさらに進めたところ、食材内に存在するトリプトファンニトロ化タンパク質が特定の代謝系に属する酵素群など、一定の機能的共通性を持ったタンパク質群に多く見られることが判明した。このことから、食用対象となる各種生物の体内において、これらの代謝系が酸化ストレスなどのニトロ化を亢進する環境に曝露されていたか否か、あるいはこれらの代謝系が活発に機能している器官であったか否かで、食材中の6-ニトロトリプトファンの含有量に差がある可能性が示唆された。なお、本研究成果の一部は2020年度の第93回日本生化学会大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の目標であった「in vitroの擬似消化系で生じた遊離6-ニトロトリプトファンの検出」を成し遂げることができなかったため、研究はやや遅れている状況である。6-ニトロトリプトファンが大変新規性の高い物質であり、市販のELISAキットなどが存在せず、検出法自体を自作しながら研究を展開せねばならないことから、方法の改良を重ねることで検出できるよう対処する。2020年度中に得られた研究結果は、この方法の改良の礎になるものであることから、当初からの研究目的や今後の研究の実施方法に大きな変更を及ぼすようなものにはなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も、食品由来の6-ニトロトリプトファンが生体の機能に及ぼす影響を解明することを目的とした研究を引き続き進める。現状では大きな研究計画の変更は必要ないが、本年度は昨年度に実施を開始したin vitroの擬似的な消化環境下での遊離の6-ニトロトリプトファンの検出に関する実験を引き続き実施し、これと並行して、小腸上皮由来の培養細胞や実験動物体内への遊離6-ニトロトリプトファンの取り込みが行われるか否かを明らかにする実験も行う。これらの実験が順調に運んだ場合は、6-ニトロトリプトファンの投与がIDOをはじめとするトリプトファン代謝に関する各種酵素の活性やその遺伝子発現にどのような影響を及ぼすかを解明する実験も行う予定である。
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