これまでの研究で、食用きのこエノキタケFlammulina velutipes、マイタケGrifola frondosaは牛乳以外に豆乳や豆類中でも生育し、その発酵過程で2型糖尿病治療薬のターゲットとされる酵素DPP-4(Dipepeptidyl peptidase-4)阻害活性を示すことを明らかにしてきた。また、ジャーファーメンターによる発酵乳の大量培養も可能であることを確認した。一方で、発酵豆乳中では植物性エストロゲンである大豆イソフラボン配糖体(ダイジン、グリシチン、ゲニスチン)が体内吸収性の高いアグリコン(ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステイン)へ変換していることを認めた。 F. velutipes発酵牛乳および発酵豆乳における生体内での効果を調べるため、高脂肪食を給餌したマウスに投与したところ、発酵牛乳では残存するラクトースやグルコースが影響したためか対照群との間に有意差が認められなかったのに対し、発酵豆乳の方は食後血糖値の上昇を穏やかにする傾向が示唆された。 また、F. velutipesおよびG. frondosa発酵豆乳中のペプチド類を分析したところ、両きのこ間に特に差はなく、DPP-4阻害に関わる主要なペプチドは発酵牛乳中に存在するものとほぼ同様であった。 発酵豆乳中のDPP-4阻害以外の生理活性について検討したところ、抗酸化活性を検出した。イソフラボン配糖体やアグリコンには抗酸化活性が認められなかったことから、他の成分が関わっていると考えた。そこで、抗酸化活性に応じて経日的変化がみられる物質を対象に解析した結果、主成分をエルゴチオネインと同定した。
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