研究課題/領域番号 |
19K11693
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
永尾 晃治 佐賀大学, 農学部, 教授 (10336109)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肥満誘発性病態 / ステロール輸送機構 / 食環境 |
研究実績の概要 |
最初の年度として、in vivo実験系において、肥満誘発性病態発症時のHDL代謝低下に関して、変動を起こしうる食事因子の検索・検討を行った。 すでに脂質代謝変動作用を持つことが分かっている植物葉乾燥粉末の摂取が2種の肥満モデル動物のHDL代謝に及ぼす影響について分析を行ったところ、HDL-TGに影響が認められたモデルもあったが、HDL-CHOLにはいずれも影響が認められなかった。加えて、植物葉乾燥粉末の摂取が、非肥満性疾病モデル動物のHDL代謝に及ぼす影響についても分析を行ったが、HDL-TGおよびHDL-CHOLともに影響が認められなかった。そこで、植物葉乾燥粉末の熱水抽出物(生理活性成分を濃縮)の摂取が肥満モデル動物のHDL代謝に及ぼす影響について分析を行ったところ、HDL-TGが低下し、HDL-CHOLには影響が認められなかった。検討に値する影響をin vivoで発揮する食事成分が見つからない中、肥満誘発性病態に好ましい影響を発揮してきたキノコの熱水およびエタノール抽出物の摂取がHDL代謝に及ぼす影響について分析を行ったところ、HDL-TGには影響が認められなかったが、HDL-CHOLにおいて、熱水抽出物摂取で上昇傾向、エタノール抽出物摂取で有意な上昇が認められた。以上の結果より、キノコエタノール抽出物をHDL代謝低下を改善する候補生分として見いだした。よって本研究により、肥満誘発性病態発症時のHDL代謝低下を悪化・改善するモデルの構築を目指して、候補成分中に含まれる化合物の解析と、それらが引き起こす代謝変動を明らかにすることで病態発症機序解明の糸口が開けると期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の成果として、幾つかの新知見と、雑誌論文2件、招待講演2件、学会発表5件の成果が得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
現代におけるメタボリックシンドロームの予防・改善における取り組みにおいて、肥満誘発性病態発症時のHDL代謝低下機序の解明は未だ手つかずの状態と言っても過言ではなく、HDL低下機序の責任分子・制御機構を明らかにし、その改善に資する食環境の評価を可能にすることは、今後の医学領域のみならず社会経済に対しても大きなインパクトを持つ。今年度の研究により、in vivo実験系において肥満モデル動物のHDL-CHOLを上昇させる候補成分を見いだすことができた。来年度は、候補成分中に含まれる有機化合物質を分析・検索し、その中からの機能性分子の絞り込みをin vitroに落とし込んでスクリーニングする評価系の構築に取り組む。更に、そのうちの有力な候補成分について、次年度にin vivoで評価するための大量調整にも取りかかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度のin vivo試験に必要な材料・試薬の経費が想定よりも安価ですんだため、次年度の候補食事成分中に含有する有機化合物の網羅的解析及び候補物質スクリーニング系構築の規模を拡大して、より充実した成果を上げるために使用する事を計画している。
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