研究課題
これまでの研究で、うま味認知の主成分は、天然だしの揮発性成分であること、グルタミン酸とイノシン酸のうま味の相乗効果は閾値以下の濃度であるため、天然だしでは説明ができない可能性が高いことを示してきた。本研究は、天然だしの揮発性成分がグルタミン酸やイノシン酸との間にうま味認知の相乗効果があるかどうかを明らかにすることを目的としている。天然だしとして昆布を用い、試料を4種類調整した。試料は、だしの揮発性成分水溶液、イノシン酸水溶液、だしの揮発性成分とイノシン酸の1:1混合溶液、蒸留水とした。試料の食塩濃度は、4種類とも6 g/Lに調整した。4種類の試料をLMS(Labeled Magnitude Scale)を用いて官能評価で味認識等を評価した。相乗効果の判定は既報に基づき、だし揮発性成分水溶液単体とイノシン酸水溶液単体の合計の1/2(理論値)を1:1混合溶液(実測値)と比較し、実測値の信頼区間下限が理論値よりも高くなった場合に相乗効果があったと判断した。官能評価の結果、うま味強度は、1:1混合溶液の実測値の信頼区間下限が理論値よりも高かった。脳の背外側前頭前野、前頭極、上側頭回のBOLDシグナルは、1:1混合溶液の実測値の信頼区間下限が理論値よりも高かった。天然だしの揮発性成分の抽出方法を検討するため、減圧下での抽出と水蒸気蒸留での抽出を比較したところ、においの強さには違いがなかった。だしを抽出しながら蒸留することで、グルタミン酸を含まずにだしの揮発性成分を抽出できる可能性が示唆された。