研究課題/領域番号 |
19K11698
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
辻 まゆみ 昭和大学, 薬理科学研究センター, 教授 (40155544)
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研究分担者 |
小野 賢二郎 昭和大学, 医学部, 教授 (70377381)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルツハイマー型認知症 / アミロイドβ / 健康食品 / ポリフェノール / ミリセチン / クルクミン / EGCG |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症の根本治療開発が確立されていない現状と、発症までに数十年を要することを鑑み、本研究では、AD発症の回避できる長期間摂取可能な健康食品の探索とその作用機序を明らかにし、認知症有病数を減少に繋げるようとするものである。アミロイドβ(Aβ)蛋白の凝集を抑制する健康食品成分の探索とその成分の最適な組み合わせを探索することを目的とした。 本年度は、in vitroでポリフェノール類(クルクミン, ミリセチン, フェルラ酸, EGTA)のAβ線維凝集抑制作用、Aβオリゴマー形成抑制を検討した。また、HPLCにて最も毒性の強いHigh molecular weight(HMW)-Aβを分取し、SH-SY5Y神経細胞におけるHMW-Aβ誘発性神経細胞障害モデルへのポリフェノール類の作用を検討した。 これらポリフェノール類の内、ミリセチン、クルクミン、EGCGは、Aβ線維凝集作用およびAβオリゴマー形成を用量依存的に抑制した。また、SH-SY5Y神経細胞におけるHMW-Aβ誘発性神経細胞傷害に対し、抑制作用を示した。特に、ミリセチンの作用は、下記のタイトルで国際学会Advances in Alzheimer's and Parkinson's therapies an AAT-AD/PDTM focus meeting(Vienna, Austria)にて発表した。 「Myricetin prevents Aβ oligomer-induced neurotoxicity via cell membrane damage」 AD発症には、数十年要する事を踏まえ、ミリセチンをはじめとするポリフェノール類を認知症発症率の高い軽度認知機能障害 (MCI)の早期段階とそれ以前に適切な処置をすることにより認知症予防および進行を食い止める可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度研究計画では、ポリフェノールの内、2’3’-dihydroxy-4’6’-dimethoxychalcone (青シソ)も行う予定であったが、購入不可能なため、2’3’-dihydroxy-4’6’-dimethoxychalconeの検討はしていない。
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今後の研究の推進方策 |
【令和2年度】Aβ線維凝集抑制作用およびAβオリゴマー形成抑制作用を示したポリフェノール類は、神経細胞(SH-SY5Y細胞)を用い、Aβ誘発性神経細胞傷害に対するポリフェノール類の作用を検討し、保護作用が見られたポリフェノール類においては、その機序を解明する。 ①AD脳では、タンパク質酸化の増加が特徴なので、HMW-Aβによる神経細胞酸化ストレスに対するポリフェノール類の抗酸化作用を調べる。 活性酸素種(ROS)、ROS消去酵素(Superoxide dismutase)の活性化、グルタチオン(酸化型、還元型)細胞膜脂質過酸化能を分析する。②HMW-Aβの神経細胞膜傷害に対するポリフェノール類の作用 パッチクランプ法による神経細胞膜電位、細胞内Ca2+動態、細胞膜流動性を測定する。 以下は研究が順調に進行した場合、 【令和3年度】HMW-Aβ誘発性神経細胞傷害に対し抑制作用を示したポリフェノール類において、さらに、細胞内小器官の変化を蛍光顕微鏡および電子顕微鏡にて観察する。さらに、APPノックインマウスへのポリフェノール類の投与を行い、in vivo実験でもポリフェノール類のAD進行抑制効果を立証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の購入不可能な試薬があったことなどから実支出額が、所要額を23,325円下まわりました。次年度、他の実験試薬購入に宛てる予定である。
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