研究課題/領域番号 |
19K11699
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
川端 輝江 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (80190932)
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研究分担者 |
庄司 久美子 (加藤久美子) 女子栄養大学, 栄養学部, 助教 (50721825)
福岡 秀興 福島県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (80111540)
櫻井 健一 千葉大学, 予防医学センター, 准教授 (80323434)
森 千里 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90174375)
西川 正純 宮城大学, 食産業学群, 教授 (90404839)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ワンカーボン代謝 / 妊娠期 / 葉酸 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
胎生期の望ましくない栄養環境は、児の遺伝子発現を制御するエピジェネティック修飾に変化を与え、将来の生活習慣病の発症素因を形成すると考えられている。ビタミンの一つである葉酸は、ワンカーボン代謝系を構成する重要な物質であり、DNAメチル化等のエピジェネティック修飾に大きく関わっている。 本研究では、妊娠初期~出産時までの母親の末梢血と臍帯血を用いて、ワンカーボン代謝に関与する栄養成分及び中間代謝物、さらには、関連する酵素の遺伝子多型を解析する。母親の栄養摂取状態及び酵素遺伝子多型が、ワンカーボン代謝及び出生児の健康アウトカムにどのように関連するか検討する。 本研究は、出生コホート研究(C-MACH))で得られた母体血(妊娠初期及び後期、分娩時)と臍帯血を利用する。対象は、約500母児ペアである。2019~2020年度はワンカーボン代謝に関与する血清中の18成分(栄養成分及び中間代謝物)の分析を、2020年度は対象者の血液からDNAを抽出し、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)の遺伝子多型(C677T)の解析を行った。 これまでの解析において、暫定的ではあるものの以下の結果が得られている。いずれの妊娠期においても、葉酸の活性型である5-メチルテトラヒドロ葉酸(5-MTHF)は、s-アデノシルメチオニン(SAM)とs-アデノシルホモシステイン(SAH)と正の相関、ホモシステインとは負の相関を示した。MTHFR C677TのTT型(変異型)の者は、CC型及びCT型の者に比べて、分娩時の母親の末梢血中5-MTHFが低値傾向、ホモシステイン濃度が有意に高値を示した。さらに、SAMは低値傾向、SAHは高値傾向、SAM/SAH比は有意に低値であった。MTHFR多型は、SAMからSAHへの代謝に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、出生コホート研究(C-MACH)で得られた血液検体について、ワンカーボン代謝関連物質と酵素遺伝子多型の分析を実施する。サンプル数は、対象者500人×4ポイント(妊娠初期及び後期、分娩時、臍帯血)である。当初の予定としては、3年間の研究期間のうち、1~2年目にワンカーボン代謝関連物質の分析及び遺伝子多型分析、3年目にデータ解析としてきた。 ワンカーボン代謝関連物質においては、2019年度~2020年度にUPLC-MS/MS分析によって18成分の同時定量を行ってきた。現段階で、全サンプルの分析が完了している。 遺伝子多型解析に関しては、2019年度に血餅画分からDNAを抽出する手法について検討を行い、その上で、2020年度にDNA抽出を実施した。現段階で、全サンプルのDNA抽出が完了している。さらに、ホモシステインをメチオニンに変換するためのメチル供与体生成のために重要な役割を持つメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)の遺伝子多型(C677T)の分析を実施し、全サンプルについて完了した。現在、他のワンカーボン代謝に関与する酵素の遺伝子多型について解析を進めているところである。 最終年度は、すべての遺伝子多型解析を終了させ、母親の食事調査結果及びワンカーボン代謝との関連性を検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況において述べた通り、3年目の今年度は、ワンカーボン代謝に関連するMTHFD1(C1-テトラヒドロ葉酸合成酵素)、SHMT(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、TS(チミジン合成酵素)、DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)、MS(メチオニン合成酵素)、MTRR(MS還元酵素)、BHMT(ベタイン-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ)、CBS(シスタチオニン-β合成酵素)の遺伝子多型について分析を進める。さらに、出生コホート調査で得られた児のデータと、本研究で得られた解析結果を突合せ、ワンカーボン代謝を指標とした胎児発育について検討し、エピジェネティック修飾との関連性について推察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3年間の研究期間のうち1年目は、血餅画分からDNAを抽出する手法について検討を行った。UPLC-MS/MS分析によるワンカーボン代謝関連物質の分析は順調であったものの、遺伝子多型解析は2年目以降に先送りとなった。2年目はコロナ禍の影響を受け、年度の前半は実験室での実験がほとんどできない状況であった。後半、ワンカーボン代謝関連物質の分析とDNA抽出を完了させたものの、MTHFR以外のワンカーボン代謝に関連する酵素の遺伝子多型解析が未着手となった。そのため、解析に係る消耗品が支出されていない。最終年度に残額を利用し、予定している酵素の遺伝子多型解析を実施する。
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