• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

アルミニウム塩による腸管上皮からの損傷関連分子の放出と食物アレルギー発症への関与

研究課題

研究課題/領域番号 19K11703
研究機関日本医科大学

研究代表者

若林 あや子  日本医科大学, 医学部, 講師 (30328851)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードアルミニウム含有食品添加物 / 硫酸アンモニウムアルミニウム / 小腸上皮細胞 / RNAシークエンシング / 腸内細菌 / 抗菌反応 / 炎症反応
研究実績の概要

これまでの研究の結果、硫酸カリウムアルミニウムまたは硫酸アンモニウムアルミニウムといったアルミニウム含有食品添加物をマウスに経口投与すると、小腸の上皮細胞死が増加すると共に、腸管の好酸球浸潤が亢進することが明らかになった。
今年度我々は、アルミニウム含有食品添加物を経口投与したマウスの小腸からEpCAM陽性上皮細胞を精製分離し、RNAシークエンシングを行い遺伝子の発現変動を網羅的に解析した。硫酸アンモニウムアルミニウムを経口投与したマウスの小腸上皮細胞では、PBSを経口投与したときに比べて、376遺伝子の発現が有意に増加し、249遺伝子の発現が低下した。発現変動遺伝子のエンリッチメント解析により、アルミニウム塩を投与した腸上皮細胞ではイオン輸送に関わる遺伝子の発現増加がみられ、アルミニウム塩処理したマクロファージ同様のイオン輸送機能の亢進が示唆された。これに伴いカルシウムイオン依存性エキソサイトーシスに関わる遺伝子発現が増加し、クロモグラニンA遺伝子Chgaなどの抗菌ペプチドやホルモン様物質の分泌の亢進が示唆された。また一酸化窒素によるシグナル伝達に関わる遺伝子の発現も増加し、一酸化窒素による腸内細菌に対する抗菌と炎症誘導の亢進が示唆された。炎症反応に関わるCasp4、Tnf、Nfkb2、Il17c、Il33遺伝子発現も増加しており、TNF-α産生とNF-κB活性化、カスパーゼ4によるグラム陰性細菌のリポポリサッカライドの細胞内認識による炎症性細胞死誘導、炎症性サイトカインIL-17cとIL-33分泌増加の可能性が示唆された。
今年度研究結果よりアルミニウム含有食品添加物は、腸上皮細胞において腸内細菌に対する様々な抗菌反応および腸管炎症誘導に関わる遺伝子の発現を増加させることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度、マウス腸上皮細胞のRNAシークエンシングにより、硫酸カリウムアルミニウムのようなアルミニウム含有食品添加物は、腸上皮細胞における腸内細菌に対する抗菌反応および腸管炎症誘導に関わる遺伝子の発現を増加させることが明らかとなった。
アルミニウム含有食品添加物を投与した腸上皮細胞では、腸上皮細胞特有の抗菌ペプチドの分泌に加え、マクロファージ同様のイオン輸送機能の亢進と一酸化窒素による抗菌反応と炎症反応誘導の可能性が示唆された。アルミニウム含有化合物は腸上皮細胞への腸内細菌の侵入を促し、腸管の上皮細胞死と炎症誘導を促進する可能性がある結果が得られたことは大きな進展であると言える。またアルミニウム含有化合物は腸上皮細胞におけるIl33の発現を増加させたことより、IL-33分泌による好酸球浸潤増加への関与の可能性が示され、これまでの研究結果を支持する研究結果であった。今年度の研究結果より、今後のさらなる研究の方向づけや目的を明確にすることができた。
今年度、引き続くコロナ禍と世界的社会状況の変化の影響により、一部の試薬やプラスチック実験器具などの納入の遅延や入手不可能となる事態もあったが、代わりとなる試薬や器具を使用するなどして対応した。研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

本年度までの研究結果から、アルミニウム含有食品添加物は、腸上皮細胞における抗菌反応や炎症誘導に関わる遺伝子の発現を増加させ、炎症性細胞死を誘導する可能性が示唆された。アルミニウム含有食品添加物は腸上皮細胞でのIl33遺伝子発現を増加させ、IL-33放出による好酸球の腸管への浸潤と炎症を誘導する可能性がある。
本年度のRNAシークエンシングにより遺伝子の転写レベルでは、アルミニウム含有食品添加物による腸上皮細胞における炎症性細胞死ピロトーシスの誘導とIL-33放出の可能性が示されたが、実際のタンパク質発現の変化については明らかでない。
そこで今後は、①アルミニウム含有食品添加物を経口投与または未投与のマウスのEpCAM陽性腸上皮細胞を分離精製し、カスパーゼ群やピロトーシスに関わる細胞内タンパク分子の活性化について、ウエスタンブロッティングや蛍光免疫染色法などの方法を用いて解析する。②細菌、もしくはリポポリサッカライドまたはリポテイコ酸などの細菌成分と共に、ミョウバンをマウス腸管オルガノイドや結腸細胞株CT26に添加した場合の、細菌や細菌成分の腸上皮細胞内への侵入について蛍光免疫染色法により明らかにする。③細菌や細菌成分と共に、ミョウバンを腸管オルガノイドやCT26に添加した時の、ピロトーシス誘導やIL-33放出について、ウエスタンブロッティング、蛍光免疫染色法、qRT-PCR、ELISAなどにより明らかにする。
今後は、アルミニウム含有食品添加物は刺激による、腸上皮細胞内への腸内細菌の侵入と炎症性細胞死ピロトーシス誘導の詳細を明らかにする。食物アレルギーや好酸球による腸管炎症の予防や治療の発展につながる礎となるべく、本研究をさらに推進する所存である。

次年度使用額が生じた理由

理由:研究計画当初は、いくつかの国内学会における研究発表のための交通費や宿泊費を計上していたが、学会のオンライン化のためにそれらが不要となった。また、コロナ禍や世界的な社会状況の変化の影響により、一部の試薬・キットやプラスチック実験器具の入手が滞ったり困難となり、若干の次年度使用額が生じた。

使用計画:次年度はマウス腸上皮細胞を用いたウエスタンブロッティング、蛍光免疫染色、RT-PCR、ELISAなどの実験研究を計画している。次年度の研究にはマウス、細胞株、試薬、器具等が必要であり、次年度使用となった研究費は有効に使う予定である。今後も適切に研究を進め、研究結果を社会に還元すべく研究を推進する所存である。

備考

若林あや子,ミョウバンによる腸管上皮損傷に伴う炎症・アレルギー誘導性損傷関連分子の放出の解析と免疫学的安全性評価の検討,日本食品化学研究振興財団第27回研究成果報告書2021年
若林あや子,食品添加物ミョウバン刺激後に腸上皮細胞に侵入して炎症性細胞死を誘導する腸内マイクロバイオームへ抗生剤が与える影響の16S rRNAメタゲノム解析,生物資源ゲノム解析拠点ニュースレターNo9,東京農業大学2022年

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 その他

すべて 学会発表 (3件) 備考 (2件)

  • [学会発表] アルミニウム含有食品添加物で誘導されるアレルギーと腸管上皮細胞死の解析2021

    • 著者名/発表者名
      若林あや子、大脇敦子、岩槻健、田中啓介、長田康孝、西山康裕、松根彰志、森田林平
    • 学会等名
      第75回日本栄養・食糧学会大会
  • [学会発表] Increased inflammatory cell death in intestinal epithelial cells by oral administration of aluminum salt as a food additive2021

    • 著者名/発表者名
      Ayako Wakabayashi, Atsuko Owaki, Ken Iwatsuki, Keisuke Tanaka, Yasutaka Osada, Yasuhiro Nishiyama, Shoji Matsune, Rimpei Morita
    • 学会等名
      第70回日本アレルギー学会学術大会
  • [学会発表] An aluminum-containing food additive upregulates gene expression involved in inflammatory cell death in intestinal epithelial cells2021

    • 著者名/発表者名
      Ayako Wakabayashi, Atsuko Owaki, Ken Iwatsuki, Yasuhiro Nishiyama, Shoji Matsune, Rimpei Morita
    • 学会等名
      第50回日本免疫学会学術集会
  • [備考] reserchmap 若林あや子

    • URL

      https://researchmap.jp/read0064948

  • [備考] 日本医科大学微生物学・免疫学教室 主な研究内容

    • URL

      https://www.nms.ac.jp/college/schoolroom/kisoigaku/biseibutsu-meneki/kenkyunaiyou.html

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi