研究実績の概要 |
本研究ではこれまで、アルミニウム含有食品添加物であるミョウバンを経口投与したマウス腸管では、腸上皮細胞死および好酸球浸潤が増加すること、さらには抗生剤(アンピシリン, ネオマイシン, バンコマイシン, メトロニダゾール)で2週間経口処置すると、ミョウバンによる腸上皮細胞死と好酸球浸潤はさらに増悪することを見出した。これらマウス腸上皮細胞のトランスクリプトーム解析を行ったところ、ミョウバン投与はCasp4やIl33遺伝子の発現を増加させ、一方抗生剤処置ではNlrp6やCasp6遺伝子の発現が増加し、ミョウバン投与によりこれら発現はさらに増強した。 次なる研究として、抗生剤で処置した後ミョウバンを経口投与したマウスの腸上皮細胞を分離して、ウェスタンブロットにより活性化カスパーゼと成熟IL-18の検出を試みた。その結果、抗生剤処置した腸上皮細胞では活性化カスパーゼ6 p15が検出され、抗生剤による腸上皮細胞のアポトーシス誘導が示唆された。また抗生剤処置下でのミョウバン投与4時間後に、活性化カスパーゼ1 p20, 活性化カスパーゼ4 p20, 成熟IL-18 p18の増加が観察され、ミョウバンによるインフラマソーム活性化を介したカスパーゼ1とカスパーゼ4の活性化と成熟IL-18産生が示唆された。抗生剤非処置マウスの腸上皮細胞では、ミョウバン投与しても活性型カスパーゼの増加は検出されなかった。 これらの結果より、腸上皮細胞において抗生剤はカスパーゼ6活性化によるアポトーシスを誘導し、加えてミョウバン投与はインフラマソーム活性化を介したカスパーゼ1とカスパーゼ4の活性化によるピロトーシスとIL-18分泌を引き起こす可能性が示唆された。抗生剤によるdysbiosisはミョウバンによる腸上皮細胞死を増強させ、深刻な腸上皮バリア損傷と消化管アレルギーの発症や悪化に関与することが考えられる。
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