研究課題/領域番号 |
19K11705
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
中野 雄介 愛知医科大学, 医学部, 講師 (50634838)
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研究分担者 |
天野 哲也 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80314003)
平野 賢一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30332737)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中性脂肪蓄積心筋血管症 / 潜在率 / ステント |
研究実績の概要 |
中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)では、心筋のエネルギー源である長鎖脂肪酸の代謝異常により、心筋エネルギー不全や中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化を呈する.本研究では、長鎖脂肪酸の代謝物である中鎖脂肪酸による特異的栄養療法が、TGCVにおける中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化の進展やステント再狭窄に対する抑制効果を有するのかどうかを、血管内超音波や光干渉断層像を用いて明らかにすることを目的としている.これに先駆け、TGCV症例を探索するため、特定患者集団における潜在率を検討した.それによると、急性冠症候群が疑われる症例の中で数%、慢性透析を要する症例の中では20%近く本疾患が潜在していることが判明し学会報告した(ESC congress 2019ポスター発表).さらに、糖尿病を有する冠動脈疾患症例に限定して潜在するTGCV症例を探索し、ステント治療後の臨床成績を検討した.それによると、本疾患が約10%潜在しており、薬剤溶出性ステント留置後の1年後内径損失は対照糖尿病群と比較してTGCV群において有意に大きく、ステント再狭窄率も同様にTGCV群で有意に高率であった(第29回日本心臓核医学会総会・学術大会で報告).さらに、ステントの再狭窄様式が対照群と比較してびまん性であるという特徴を見出した(AHA scientific sessions 2019発表).本知見は、次年度に予定される中鎖脂肪酸による栄養療法のステント再狭窄に対する抑制効果を検討するうえで、未治療群のデータとして重要な基盤となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度において、申請者らは、中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)の特定患者集団における潜在率およびテント治療後の臨床成績を検討・報告した.これらのデータは既に論文化し投稿中である.本研究結果は,次年度に予定される中鎖脂肪酸による栄養療法下でのステント再狭窄に対する抑制効果を検討するうえで、未治療群のデータとして重要な基盤となる.
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今後の研究の推進方策 |
未治療の中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)群において、ステント治療後の臨床成績が不良であることを確認した.2020年度、TGCV症例の冠動脈硬化および冠動脈ステント留置部に対して、中鎖脂肪酸栄養療法が与える影響を検討する.それにより、中鎖脂肪酸による特異的栄養療法の、既知の心筋エネルギー不全に対してのみでなく、冠動脈硬化の進展やステント再狭窄に対する効果の可能性が見出されることに期待する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、血管内超音波や光干渉断層像を用いて、中鎖脂肪酸による特異的栄養療法が中性脂肪蓄積型冠動脈硬化やステント再狭窄に与える効果を確認するものであるが、基準となる未治療における治療成績を先に検討した.このため、血管内超音波や光干渉断層像を用いた観察を次年度へ繰り越すこととなった.2020年度では、倫理審査承認後に中鎖脂肪酸による特異的栄養療法を行い、相当の時期に血管内超音波や光干渉断層像による観察・評価を行い研究を進める.
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