研究課題/領域番号 |
19K11709
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五十嵐 麻希 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (10623035)
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研究分担者 |
高田 修治 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, 部長 (20382856)
栗木 清典 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (20543705)
加藤 久典 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (40211164)
福井 由宇子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, (非)研究員 (50342639)
賈 慧娟 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (60456324)
目加田 優子 文教大学, 健康栄養学部, 准教授 (60617281)
長幡 友実 東海学園大学, 健康栄養学部, 准教授 (40512512)
鈴木 友貴 (小久保友貴) 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 准教授 (10610066)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | テーラーメイド栄養 / 一塩基多型 / ゲノムワイド関連解析 / フェノムワイド関連解析 / オンライン料理画像調査 / ゲノム編集 / rs671 / 食嗜好 |
研究実績の概要 |
がんや糖尿病などの多因子疾患の発症には、食事が大きく影響する。多因子疾患予防のために、個人の遺伝的体質を考慮したテーラーメイド栄養の構築が必要である。よって本研究は、テーラーメイド栄養の実践を目指した分子基盤の構築を目的としている。 遺伝的体質は、一塩基多型(Single nucleotide polymorphism: SNP)に起因する。われわれはこれまで、日本人のゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study: GWAS)により、食物摂取および食嗜好に関与する遺伝子座を同定してきた。本年度は、12番染色体上にある12q24領域と、紅茶の摂取頻度が関連することを英文科学雑誌にて報告した。さらに、12q24領域上に存在するアルデヒド脱水素酵素のSNP(rs671)と多様な食物摂取行動について、フェノムワイド関連解析を行い、実に多彩な食行動がこのSNPと関連していることを見出した。また、食行動とBMIの関連を変数選択法を用いた回帰解析にて検討した。この結果、rs671の遺伝型毎に、食行動とBMIの変化に特徴があることを見出した。このことは。rs671の遺伝型別に最適な食べ方が異なることを示している。この成果については、現在論文執筆中である。 テーラーメイド栄養の知識基盤構築のためには、食物摂取頻度調査に代わる詳細かつ汎用性の高い食事調査が必要である。研究代表者は、スマートフォンアプリケーションを用いたオンライン料理画像調査を共同研究者と共に開始し、現在この方法の妥当性を検証している。 rs671と食行動の関連メカニズム解明のために、2019年度にはゲノム編集技術を用いてヒトrs671を再現するAldh2ノックインマウスを作成した。現在、このマウスを用いた食嗜好の予備実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1万人の日本人集団におけるゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study: GWAS)によって、12q24領域と紅茶の摂取頻度との関連を英文科学雑誌に投稿し、掲載に至った。さらに、フェノムワイド関連解析(Phenome Wide Association Study: PheWAS)と変数選択法を用いた食行動とBMIについての回帰解析により、遺伝的体質毎に気を付けるべき食行動を見出した。この成果は、テーラーメイド栄養学のエビデンスとして重要であると考えられ、2021年度中には論文として発表できる見込みがついている。 新たに始めたオンライン料理画像調査では、すでに調査を始めており、2021年度中には妥当性の評価ができる見込みである。 ヒトrs671を再現するAldh2ノックインマウスは、現在3系統の樹立に成功し、食嗜好性の予備実験を行っている。2021年度には本実験を行い、成果を発表する予定である。 以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
rs671の遺伝型による食行動とBMIの違いについては、論文として公表する。 オンライン料理画像調査は、2020年度秋から3か月おきに4回実施する。1回目の調査では、オンライン調査と共に秤量法による食事調査を行っており、現在は栄養士育成校の学生による栄養価計算が行われている。2021年度中には、オンライン料理画像調査の妥当性を検証し、論文化する予定である。また、この調査データを用いて、rs671と関連する栄養素を探索する。 ヒトrs671のノックインマウスにおいては、食嗜好性の実験を行い、その結果を2021年度中に発表できるように進める。また、rs671のノックインマウスの基礎的な代謝経路につても検討していく予定である。実験を遂行する上で、マンパワー不足が課題となる。これについては、他大学の研究者とともに進めることで解決をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
オンライン食事調査研究を開始し、共同研究者の追加と謝金の使用が必要となったため。
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