研究課題
骨格筋は運動や身体活動を司る組織であり、その機能低下はQOLやADLの低下に直結する。健康長寿を実現するためにはサルコペニアの予防・治療が極めて重要となる。生理活性物質に対する細胞の応答はヒトと動物では異なることがあるため、研究結果をヒトへ外挿する場合、ヒト細胞を用いた研究が望まれる。本研究はヒト骨格筋から高品質な幹細胞を精度高く獲得する技術や分化誘導・維持培養系を駆使し、得られたヒト筋細胞を用いて、筋肥大を誘導または筋萎縮を抑制する因子のスクリーニングを実施し、サルコペニアの予防・治療法開発を目指す。まずは栄養素として280種類の化合物を含めたペプチド・アミノ酸ライブラリーを用いて、ヒト筋細胞の肥大を誘導する成分を探索した。ヒト筋管細胞を96-wellプレートで培養し、280種類のライブラリー成分を作用させ、筋肥大効果を観察した。ミオシン重鎖の免疫蛍光染色を行い筋管細胞の面積をハイスループットイメージングシステムで定量評価した。化合物を作用させることによって、筋管細胞が肥大し、剥離やすくなる現象を確認された。また、ヒト骨格筋から獲得されたヒト筋幹細胞でも、その品質には「バラツキ」が存在し、分化能も異なる。そこで、分化能の異なる提供者由来のヒト筋幹細胞に関して、網羅的遺伝子発現解析を実施した結果、幹細胞性の指標であるPax7の発現と同様の変動を示す複数の因子を同定した。これらは、ヒト筋幹細胞の品質を規定する因子として期待される。
2: おおむね順調に進展している
ヒト筋衛星細胞を分化させて得られる筋管細胞の無血清維持培養法を用いて、添加物質の筋細胞に及ぼす影響を評価することができた。
化合物によって、筋管細胞が肥大し、剥離やすくなる現象を確認されたため、実験系を微調整しながら有効成分を再度確認し、ヒト筋管細胞に作用させ、筋肥大・筋委縮関連シグナル因子の発現について精査する。
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JSCM Rapid Communications
巻: 2 ページ: 1-13
10.1002/j.2617-1619.2019.tb00012.x
https://www.tmghig.jp/research/release/2019/0426.html