2023年度については、2022年度に得られた研究成果に基づき、電気刺激と有酸素運動(以下、AE)を同時施行した場合に生じる痛覚閾値の変化とストレスへの影響について、健常者を対象として検討した。 実験条件としては、電気刺激とAEを同時施行する条件(以下、同時施行条件)、AEのみを施行する条件(以下、AE単独条件)、電気刺激・AEのいずれも施行しない条件(以下、コントロール条件)の計3条件を設定した。なお、AEに関しては、起立や歩行が困難な高齢者等でも実施可能な座位での両腕の屈伸運動を採用した。その上で、各条件にて、介入開始から介入終了までの痛覚閾値の変化と、介入中のストレス指標として心拍変動周波数成分(具体的には、交感神経活動の指標である低周波数成分と高周波数成分の比(以下、LF/HF)と副交感神経活動の指標である高周波数成分(以下、HF))に注目した。結果、痛覚閾値については、コントロール条件と比較して他の2条件で同程度の上昇が認められた。一方、心拍変動周波数成分については、コントロール条件と比較してAE単独条件では交感神経活動の有意な上昇が認められたものの、同時施行条件ではコントロール条件や運動単独条件と比較して交感神経活動の有意な上昇は認められなかった。以上の結果から、AEと電気刺激を同時施行することにより、対象者は過大なストレスを受けることなく痛覚閾値の上昇を得られることが示された。
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