世界的に蔓延する肥満は、糖尿病、脂質異常症、高血圧等の生活習慣病の発症基盤であり、深刻な健康問題となっている。本課題で着目した「レプチン」は、視床下部に作用して食欲を抑制するとともに代謝を亢進して体重を減少させる抗肥満ホルモンとして知られる。当初、レプチンを分泌するのは脂肪細胞だけとされていたが、胃粘膜細胞もレプチンを分泌することが発見され、摂食に応答して迅速に血中レプチン濃度を上昇させ、食欲抑制と代謝亢進を誘導することが示唆されている。しかしながら、胃粘膜細胞に対してレプチン分泌を刺激する食品因子は未同定であり、その分泌機構も未解明のままであった。本研究では、胃粘膜細胞のレプチン分泌を刺激する食品因子を探索し、エピガロカテキンガレート(EGCG)を同定した。2020年度は、エピガロカテキンガレート(EGCG)によるラット由来正常胃粘膜細胞RGM1のレプチン分泌刺激機構を解析し、カテキンレセプターとして知られる67 kDaラミニンレセプターが活性化し、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を介した分泌機構を明らかにした。2021年度は、マウスへのEGCGの経口投与によって胃液中へレプチンが分泌されるかどうかを評価した。分析手法として採取した胃液中のタンパク質を分離し、ウェスタンブロット法を用いて胃液レプチンを検出する評価法を構築した。マウスへEGCGを経口投与し、5分後に胃液を回収して解析した結果、EGCGの経口投与によって有意に胃液レプチン濃度が上昇することを見出した。
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