本研究では、静脈血栓塞栓症を中心に、血栓性・炎症性疾患に対する食品成分と遺伝子変異の影響を解析することで、特に日本人の血栓症の予防、治療法の充実に 向けた基盤を構築することを目的としている。 本年度は、肺塞栓症に対するn-3系多価不飽和脂肪酸、黒酢および黒酢もろみ末摂取の予防効果を、コラーゲン-アドレナリン誘発マウス肺塞栓症モデルおよび組織因子誘発マウス肺塞栓症モデルを用いて解析した。また、日本人型静脈血栓塞栓症のモデル動物として樹立したプロテインS-K196EマウスおよびプロテインS欠損マウスを用いて、ヒトプロテインSの血液製剤としての有用性を検証した。 本研究において、複数のマウスモデルを組み合わせて多面的・多角的な解析を行うことにより、n-3系多価不飽和脂肪酸(特にエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸)の摂取および、黒酢成分、黒酢もろみ末成分の摂取が静脈血栓塞栓症の抑制に有効であることが明らかになった。さらに、プロテインS変異マウスを活用することで、プロテインSの製剤化に向けた見通しを切り開くことにも成功した。
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