研究課題/領域番号 |
19K11726
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
安田 邦彦 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50278446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インスリンシグナル / mTORシグナル / アセチル化修飾 / HDAC6 / 老化 / オートファジー / 分子シャペロン |
研究実績の概要 |
生体機能の担い手であるタンパク質の品質管理機能(Protein quality control: PQC)の破綻は生体内の様々な代謝機能を低下させ、ホメオスタシスのバランスが崩れることで疾患を誘発する。多くの場合、生活習慣(食生活や社会的ストレスなど)が大きく関与しており、老化もその要因の一つである。最近の研究で高齢者が罹患するアルツハイマー病が代表的な生活習慣病である糖尿病と密接に関与していることが報告されており、この密接な繋がりにはインスリンシグナル系とその下流に位置するmTORシグナルが関与することがわかってきた。これまでリン酸化修飾が細胞内シグナル伝達における主要な制御機構であるとされていたが、本研究ではPQCの制御システムの一つであるオートファジー誘導を制御するアセチル化修飾関連分子(HDAC6やMdm20)がインスリンシグナル系だけでなくmTORシグナル系も制御することを見出し、その詳細な分子機構を明らかにすることを目的にしている。 本年度は特にPQCにおけるオートファジー、なかでもシャペロン介在性オートファジー(CMA)の活性が脱アセチル化酵素であるHDAC6によって制御される仕組みを明らかにするために、アセチル化によるCMAの主要な因子であるHSP70のシャペロン機能への効果及び作用部位について検討を行なった。HSP70はHSP105と結合することによりシャペロン機能が抑制されており、今回の研究でHSP70とHSP105の結合の親和性がHDAC6により低下すること、またHDAC6の作用部位がHSP105の64番目のLysである可能性まで絞り込むことができた。 また次年度はPQCに対する効果だけではなく、HDAC6によるインスリン及びmTORシグナル系の活性制御機構についても詳細な解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は所属機関の異動により研究環境が大きく変化し、学外に新たに関西圏(大阪・京都)に研究協力者を得た上で今年度から研究を本格的に再開する予定が、年度初期は新型コロナウィルス感染拡大により緊急事態宣言が出され、試薬の発注や他施設連携での研究、さらに教育面でも通常授業から急遽オンライン授業への変更などを余儀なくされ教育面でのエフォートに多くの時間を割かれたこともあり思うように研究を進めることができなかった。その後研究を再開できるようになってきたが、当初の予定よりは大きく遅れた結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は新型コロナウィルス感染拡大による影響により思うように研究を進めることができなかったが、その間に新たな研究デザインを模索し、次年度に実行に移せるように準備を行なってきた。2021年度は2020年度の研究を遅れを取り戻すと共に、アセチル化修飾と分子シャペロンによるタンパク質の品質管理システムの構築を軸に大阪市立大学医学部免疫制御学分野の國本浩之助教と共に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は年度開始早々に新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言の発令に伴い、研究自体進めることができなかったことが大きく影響している。特に本研究は他施設との研究協力のもと実施している部分が大きく、両施設間の調整も必要であり、この点も研究の遅延の要因の一つである。次年度も新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けつつも、その点も踏まえて研究を進められるように準備をしているところである。
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