研究課題/領域番号 |
19K11727
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研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
近藤 貴子 名古屋女子大学, 健康科学部, 講師 (60737203)
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研究分担者 |
鵜川 眞也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20326135)
田辺 賢一 名古屋女子大学, 健康科学部, 講師 (60585727)
稲垣 彰 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (70405166)
三好 規之 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (70438191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 感音性難聴 / フラクトオリゴ糖 / プレバイオティクス |
研究実績の概要 |
感音性難聴の発症・進行には、食生活、葉酸不足、カルシウム代謝異常、酸化ストレスおよび生活習慣病など様々な要因が影響することがわかっている。ただし、腸内環境を改善することで宿主に有益な効果をもたらす難消化性食品成分である、「プレバイオティクス」が感音性難聴で有効であるかは未知である。本年度の研究では、進行性難聴マウスに、プレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖(FOS)を投与し、腸内細菌叢の変動を介した聴覚機能に関与する内耳の遺伝子発現、単鎖脂肪酸の受容体の発現および酸化ストレスレベルについて解析を行った。 (1)糞便から抽出したゲノムDNAを次世代シーケンサーでメタゲノム解析(菌叢組成・菌叢比較解析)し、FOS摂取有無の群間で変動する腸内細菌叢の構成を明らかにした。FOS摂取群では、BacteroidetesおよびVerrucomicrobiaの増加、Firmicutesの減少が確認された。 (2)FOS摂取有無の群間で変動する盲腸内容物の解析では、FOS摂取群の短鎖脂肪酸の著しい増加が確認された。 (3)血中の酸化ストレスマーカーを酵素免疫測定法(ELISA)で測定したところ、TBARS(2-thiobarbituric acid reactive substances)および3-NT(3-nitrotyrosine)はFOS摂取によって減少した。しかしながら内耳のSirt3発現には変動が見られなかった。 (4)定量PCRにより内耳の聴覚関連遺伝子や短鎖脂肪酸や酸化ストレス応答因子の発現を定量し、FOSによる発現変動を明らかにした。FOS摂取により、BDNF, TrkB, GluR4, FFAR3の発現上昇が確認され、Hdac4の発現現象が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、FOSが誘導する腸内細菌叢を介する聴力機能の制御について、感音性難聴モデルマウスを用い解析し、3年間の研究期間において、 計画1:FOSによるプレバイオティクス効果を介した感音性難聴の進行抑制効果 計画2:発症前の継続的なFOS摂取による加齢性難聴の発症の未然防止または遅延効果 計画3:プレバイオティクスを介した内耳の聴覚遺伝子群のエピジェネティック制御 を明らかにする。本年度は計画1のうち、早発性進行性難聴モデルマウスDBA/2Jを用いた生化学的解析(PCR,菌叢解析、盲腸解析など)は順調に進んているが、機能的解析(聴性脳幹反応)の確立が予定通りに進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
FOS摂取により誘導された腸内細菌叢が、細菌由来代謝物の量的・質的な変化を介して聴力低下の発症・進行を抑制できるのかを明らかにするため、進行抑制効果の検証は聴力低下がはじまる4週齢のDBA/2Jを、発症抑制効果の検証は聴力低下が未発症な3カ月齢のC57BL/6Jを用いて行う予定である。 腸内細菌変動および内耳の遺伝子発現の変動が明確になってきているため、今後は機能的解析(聴性脳幹反応)を中心に研究を進めていく。C57BL/6Jを用いた解析を進め、発症抑制の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、DBA/2Jを用いてFOSの難聴進行抑制効果を検討し、FOSの難聴発症抑制効果を検明確することを目的とした。FOSにより誘導された腸内細菌叢が、細菌由来代謝物の量的・質的な変化を介して聴力低下の発症・進行を抑制できるのかを明らかにするため、聴性脳幹反応(ABR)検査による聴力の機能解析を経時的に測定する予定であったが、生化学検査に多くの時間を費やしたため、機能解析に必要な機器およびソフトウェアを整備することができなかった。したがって機能解析を確立する費用が2020年度に持ち越され、次年度使用額が生じた。
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