研究課題/領域番号 |
19K11727
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研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
近藤 貴子 名古屋女子大学, 健康科学部, 講師 (60737203)
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研究分担者 |
鵜川 眞也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20326135)
田辺 賢一 名古屋女子大学, 健康科学部, 講師 (60585727)
稲垣 彰 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (70405166)
三好 規之 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (70438191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 感音性難聴 / プレバイオティクス / 内耳神経 / フラクトオリゴ糖 |
研究実績の概要 |
感音性難聴の発症・進行には、食生活、葉酸不足、酸化ストレスおよび生活習慣病など様々な要因が影響することがわかっている。ただし、腸内環境を改善することで宿主に有益な効果をもたらす難消化性食品成分である「プレバイオティクス」が感音性難聴に有効であるかは未知である。昨年度は早発性進行性難聴モデル(DBA/2Jマウス)を用いて、プレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖(FOS)を投与し難聴進行抑制の検討を行った。本年度の計画では、遅延性難聴モデル(C57BL/6Jマウス)を用いて難聴発症抑制の効果を検討する実験を行う計画であったが、大学閉鎖などにより動物実験が実施できなかった。そのため、早発性進行性難聴モデルのサンプルを用いて、聴覚神経に発現するたんぱく質レベルでの解析を行った。ただし、機能的解析は動物実験ができなかったことにより、実施できなかった。 (1)FOS摂取有無の群間で内耳の有毛細胞や聴覚神経に発現するたんぱく質(TUJ1,BDNF,TrkB など)を免疫染色し、形態学的解析を行った。 (2)FOS摂取有無の群間で内耳の聴覚神経生存率の違いを確認するため、神経マーカー(TUJ1とDAPI)を用いて定量的解析を行った。 (3)内耳のサンプル回収ができなかったため、脳幹をサンプルとして短鎖脂肪酸受容(FFAR2とFFAR3)や酸化ストレス応答因子(Hdac1とHdac4など)の遺伝子発現をリアルタイムPCRで定量解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、FOSが誘導する腸内細菌叢を介する聴力機能の制御について、感音性難聴モデルマウスを用い解析し、3年間の研究期間において、 計画1:FOSによるプレバイオティクス効果を介した感音性難聴の進行抑制効果 計画2:発症前の継続的なFOS摂取による加齢性難聴の発症の未然防止または遅延効果 計画3:プレバイオティクスを介した内耳の聴覚遺伝子群のエピジェネティック制御 を明らかにする。本年度は計画1のうち、早発性進行性難聴モデルマウスDBA/2Jを用いた生化学的解析(PCR,菌叢解析、盲腸解析など)は順調に進み、Prebiotic effect of fructo-oligosaccharides on the inner ear of DBA/2 J mice with early-onset progressive hearing loss.が J Nutr Biochem. に受理された。ただし、計画2の加齢性難聴の発症の未然防止または遅延効果の解析はサンプル作成さえも実施できていない。また、機能的解析(聴性脳幹反応)の確立が予定通りに進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
FOS摂取により誘導された腸内細菌叢が、細菌由来代謝物の量的・質的な変化を介して聴力低下の発症・進行を抑制できるのかを明らかにするため、発症抑制効果の検証は聴力低下が未発症な3カ月齢のC57BL/6Jを用いて行う予定である。 腸内細菌変動および内耳の遺伝子発現の変動が明確になってきているため、今後は機能的解析(聴性脳幹反応)を中心に研究を進めていく。C57BL/6Jを用いた解析を進め、発症抑制の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、加齢性難聴モデルのC57BL/6Jを用いてFOSを8週間摂取させ、難聴発症抑制効果を検討することを目的とした。FOSにより誘導された腸内細菌叢が、細菌由来代謝物の量的・質的な変化を介して聴力低下の発症・進行を抑制できるのかを明らかにするため、聴性脳幹反応(ABR)検査による聴力の機能解析を経時的に測定する予定であったが、2度の大学施設閉鎖のため動物実験計画を中断した。また、他県への移動規制のため、当初予定していた盲腸内容物の解析も実施できなかった。動物実験ができなかったことより、費用が2021年度に持ち越され、次年度使用額が生じた。
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