研究課題/領域番号 |
19K11733
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
藤田 守 久留米大学, 医学部, 客員教授 (60037471)
|
研究分担者 |
中村 桂一郎 久留米大学, 医学部, 教授 (20172398)
近江 雅代 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (20301682)
森本 景之 産業医科大学, 医学部, 教授 (30335806)
熊井 まどか 長崎国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50360300)
熊谷 奈々 中村学園大学, 栄養科学部, 講師 (70552983)
馬場 良子 産業医科大学, 医学部, 講師 (90271436)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 胎児期 / 出生直後 / 小腸 / 絨毛 / 吸収上皮細胞 / 消化吸収機構 / 栄養環境エピゲノム |
研究実績の概要 |
食事などの環境因子がDNAの塩基配列を変化させることなく、DNA塩基やDNAが巻き付いているヒストンタンパクのメチル化やアセチル化などを通して、遺伝子発現を制御する仕組み(エピゲノム)を介して、代謝の恒常性維持に貢献している。その破綻は生活習慣病の発症などが予想される。 令和元年度は、胎生期の異常栄養環境が出生後の栄養補給系(小腸;消化吸収機構)、栄養輸送系(血管)、排泄系(腎臓)に及ぼす影響を解明し、生活習慣病発症機序とその早期予防法を確立するための基礎的研究を行った。実験は妊娠ラットを用いて、胎生時期をⅠ群;胎芽期(妊娠初期)、Ⅱ群;胎児期(妊娠中期)、Ⅲ群;胎児期出生前(妊娠後期)に分け、それぞれ7日間ずつ低栄養環境にした。対照群は正常栄養飼育を行った。種々のバイオイメージング法を用いて分子形態学的に解析を行った。Ⅰ群の胎芽期低栄養環境では出生体重に影響を及ぼさなかった。しかし、Ⅱ群では殆ど低出生体重仔であった。さらに、Ⅲ群では在胎日数が長くなったにも関わらず、殆ど極低出生体重仔であった。走査型電子顕微鏡による検索では、Ⅱ群、Ⅲ群の出生後の回腸において、正常と比べて短い絨毛が多数観察された。それらの絨毛表面を透過型電子顕微鏡で検索すると、吸収上皮細胞内に、出生直後から既に頂部細胞膜ドメインからタンパクなどの高分子物質を細胞内に取り込む機構(エンドサイトーシス)および細胞内消化を行う巨大ライソゾームが認められた。これらの巨大ライソゾームを有する吸収上皮細胞は離乳期を過ぎても存在した。短い絨毛の内部を検索すると、正常と比べて、狭い範囲の毛細血管網が観察された。Ⅱ群、Ⅲ群の出生後の腎臓では萎縮した腎小体が多数認められた。これらのことから異常栄養(低栄養)環境は胎児の栄養補給系、栄養輸送系および排泄系器官の発育に影響を及ぼし、それらは出生後も続くことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は補助事業の初年度として、ラットの胎生時期をⅠ群;胎芽期(妊娠初期)、Ⅱ群;胎児期(妊娠中期)、Ⅲ群;胎児期出生前(妊娠後期)に分け、それぞれ7日間ずつ低栄養環境にして、出生直後(新生児期)から乳飲期、さらに離乳期における栄養補給系の消化管(小腸;空腸・回腸、大腸;盲腸・結腸近位部・結腸遠位部)および排泄系の腎臓をバイオイメージング法(光学顕微鏡、走査型・透過型電子顕微鏡)により分子形態学的に比較検討することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度と同様に、ラットの胎生期異常栄養環境実験を行い、出生後における栄養補給系の小腸;消化吸収機構および排泄系の腎臓をバイオイメージング法により分子形態学的に検索を行う。特に、Ⅱ群;胎児期低栄養環境(妊娠中期低栄養環境)について、出生直後(未授乳)から乳飲期(生後7、14日目)、離乳期(21日目)まで詳しく解析を行う。さらに、小腸(空腸・回腸)上皮細胞および腎臓のエピゲノム変化(ヒストンのメチル化など)を検索するために、抗体を用いて免疫組織化学的に検索を行う。また、収束イオンビーム搭載型走査電子顕微鏡(FIB/SEM)を用いて吸収上皮細胞の連続写真(1試料あたり600~700枚)を撮影し、三次元的に立体再構築を行い、エンドサイトーシスに関与する膜系構造の連続性および空間超微形態学的に解析を行なう予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルスによる非常事態宣言のため、年度末に予定していた学会参加・発表および本研究に関する共同実験等で使用する経費が残った為。
(使用計画)走査型・透過型電子顕微鏡用試薬および観察画像データを記録するための電子媒体等を購入する予定である。
|