研究課題
出生児約100名の同一人物の臍帯血、胎盤のエピゲノムを比較し、子宮内環境の影響と関連して変化するエピゲノムの影響を比較した。エピゲノムとは、遺伝子発現を制御するDNAとその周辺因子の後天的な化学修飾を指し、環境によって変動しうる細胞内の機構を指す。出生後の児の細胞機能を左右する記憶媒体となる可能性がある。したがって、出生時に観察されるエピゲノムは新生児の予後にも関与すると考えられる。出生体重が健常範囲にあっても、もともと痩せ傾向であった母親、あるいは、妊娠中の体重増加量が適正量以下であった母親から出生した児に認められるエピゲノム変化は、臍帯血よりも胎盤でより顕著に認められた。環境によってエピゲノムに変化が認められたゲノム領域は、発生に関連する遺伝子がコードされている領域が含まれており、発育に関する情報が子宮内でプログラムされ、出生時に観察されている可能性も示唆される。現在、培養胎盤細胞を用いて、実際のヒト組織で観察されたエピゲノム変化を再現する環境の同定を行っている。本研究結果は、将来の疾患発症リスクを事前に予測することを目的とした先制医療のエビデンスづくりに貢献できると考える。
3: やや遅れている
コロナ禍の影響による実験の停滞はあったが、取得済みデータ解析より、研究を進捗させることはできた。
胎盤の細胞の培養系を用いた実験も導入し、子宮内環境を再現する培養環境条件の決定を現在進めており、マクロな環境要因をより細かな因子に分類し、培養系でエピゲノム変化を起こす環境要因を検討する。健常な発育を促す子宮内環境とは何であるのか、因子同士の相互作用も含めて探索する。
感染拡大による業務体型の変化とプラスチック製品の不足により、当初の計画より実験の遅れをとったため、次年度使用額が生じた。培養細胞を用いた研究と、取得済みデータの解析を進め、研究目的達成のためのデータ獲得、ならびに研究発表に必要な経費の支出に充てる。
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BMJ Open Diabetes Res Care.
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Frontiers in Endocrinology
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