早産児あるいは低出生体重児は、そうでない児に比べ高確率に将来疾病を発症する事実が疫学的に証明されている。一方で我々はこれまでに、正期産で正常範囲の体重で出生した児であっても、子宮内栄養環境が不適切であった事実はエピゲノムを介して記憶されていることを認め、報告した(Kawai et al. 2015)。本研究では、出生時phenotypeだけではなく、子宮内栄養環境の経緯も踏まえ、新生児期の発育スピードに注意を促す必要性を検証する。 具体的には、正常出生体重児であっても、胎児期低栄養の児には分子レベルで正常と異なるプログラミングが行われている可能性を明らかにすることである。低出生体重の児は疫学的研究からも予後に注意が必要なことは自明である。また、低出生体重の原因は環境要因だけではなく、遺伝学的なgenotypeの背景も関与が大きい(Horikoshi et al. Nature 2016)。一方で、正常出生体重児は遺伝学的には正常な発生をたどっているが、環境要因がエピゲノムに記憶され、その後の生体反応に影響する可能性を多く含んでいると考え、正常出生体重児を対象に研究を行った。 その結果、妊娠中の母体血清栄養素のうちの、ある栄養素量と関連して臍帯血DNAメチル化値から推測される生物学的週数(epigenetic clock)が暦に基づく週数と乖離してくることを認めた。
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