研究課題/領域番号 |
19K11736
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
三浦 ゆり 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (00216574)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 健康長寿 / 糖鎖 / グライコミクス / 血漿タンパク質 / 長期縦断コホート / 慢性炎症 / 質量分析 / 老化 |
研究実績の概要 |
研究代表者らがこれまでに発見した「健康長寿糖鎖」(高分岐高シアル酸糖鎖)の生物学的な意義、すなわち慢性炎症に対して抑制的に働き、健康長寿の要因であるのかを明らかにする。具体的には、① ヒト血漿糖鎖解析による健康長寿糖鎖の出現と慢性炎症との相関について、② 糖鎖リモデリングマウスの解析による健康長寿糖鎖の炎症に対する防御作用について、③ 健康長寿糖鎖によるハプトグロビンの機能制御について検討する。本研究により、慢性炎症と健康長寿糖鎖の関連性のみならず、キャリアタンパク質の機能変化を含めた生物学的意義や、加齢により亢進する慢性炎症への応答能との関連について新たな知見が得られる。本研究は、老化プロセスの理解を格段に深めるばかりでなく、健康長寿糖鎖を利用した新たな健康管理システムや新たな老化制御への展開を目指す。 今年度は、①高齢者の大規模長期縦断コホート(SONIC: Septuagenarians, Octogenarians, Nonagenarians Investigation with Centenarians)の70歳代参加者の中から、初回 (1 wave)、2回目(2 wave: 3年後)、3回目(3 wave: 6年後)の調査において連続的にC-reactive protein (CRP: 炎症マーカー)が増加した解析対象者を抽出した。抽出にあたっては服薬や病歴等の情報を考慮し、炎症性の疾患に罹患している対象者は除外した。最終的に27人の解析対象者を抽出し、来年度以降、個人ごとに1 waveと3 waveの血漿糖鎖を比較する。 また、②高分岐糖鎖の合成に関わるGlcNAc転移酵素V (GnT-V)のトランスジェニックマウスを用いて、高分岐高シアル酸糖鎖を多くもつ「糖鎖リモデリングマウス」の作製を試みた。GnT-Vトランスジェニックマウスを凍結胚より飼育し、各臓器におけるGnT-Vタンパク質と高分岐糖鎖を調べた。しかし、野生型に比べてGnT-Vタンパク質が高発現していることを確認できなかったため、この実験系は断念した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SONICの70歳代参加者の中から、6年間にわたる3回の調査に参加していて、連続的に炎症マーカーであるCRPが増加した対象者45人を抽出した。さらに、服薬・病歴の情報を元に対象者を絞り、明確な炎症性の疾患なしに炎症マーカーが連続的に増加した解析対象者27人を抽出した。 ヒトGlcNAc転移酵素V (GnT-V)のトランスジェニックマウスを凍結胚から飼育し、26週齢と42週齢において全血採血、肝臓、腎臓、膵臓の摘出を行った。野生型 (w/w) とトランスジェニック型(tg/tgあるいはtg/w)それぞれの臓器について、GnT-V プライマーを用いた定量PCR、抗GnT-V抗体を用いたイムノブロット、高分岐N-型糖鎖を認識するレクチンPHA-L4 (Phaseolus vulgaris)を用いたレクチンブロットを行い、トランスジェニックマウスにおいてGnT-Vの高発現と高分岐N-型糖鎖の増加が認められるかどうか調べた。その結果、肝、腎、膵のいずれにおいても、トランスジェニックマウスにおいてGnT-V mRNAの発現は認められたが、GnT-Vタンパク質の発現は認められず、また高分岐糖鎖の増加も認められなかった。週齢による変化も認められかった。
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今後の研究の推進方策 |
CRPが増加しなかったSONIC 70歳代の中から、傾向スコアマッチングを用いて対照群を抽出する。すべての血漿検体の糖鎖解析を行い、解析対象群と対照群それぞれにおける6年間の糖鎖変化について調べる。 GnT-Vトランスジェニックマウスの実験は断念し、in vivoトランスフェクションを用いて糖鎖リモデリングマウスの作製を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに使用したが、僅かな残額が生じた。
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