糖尿病や肥満症の治療には食事療法は必須であるが、患者のアドヒアランスが低いという課題がある。食事療法を必要とする患者のアドヒアランスを下げる要因の一つが糖質である。糖質は、高嗜好性かつ行動強化力が高く、糖尿病・肥満症患者の多くの特徴であるエネルギーの過剰摂取や間食の習慣化などの食行動の乱れを引き起こす。これまでに、FGF21-オキシトシン(OXT)系が糖の摂取欲求を調節することが報告されている。他方、FGF21-OXT系の糖尿病・肥満症における病態生理学的な意義は未解明である。そこで糖質欲求を制御するFGF21-OXT系の破綻が、肥満の発症および増悪に寄与するのかを検証した。 野生型マウスに普通食(ND群)または高脂肪高ショ糖食(HFHSD群)を、OXT神経特異的β-Klotho欠損マウス(OXT-Klb-KO群)とKlb-floxマウス(Klb-flox群)に高脂肪高ショ糖食を8週間にわたり自由に摂取させ、週に1回体重を測定した。また、グルコースを経口投与し、投与前および投与後の血中FGF21濃度を測定した。 HFHSD群はND群と比較して体重が有意に増加した。ND群は糖応答性の血中FGF21の分泌が認められたが、他方、HFHSD群では糖応答性の血中FGF21の分泌が消失した。OXT-Klb-KO群は、Klb-flox群と比較して高脂肪高ショ糖食負荷開始後4週の時点で体重の有意な増加が認められたが、8週の時点で体重差は消失した。OXT-Klb-KO群およびKlb-flox群では、糖反応性の血中FGF21の分泌が認められなかった。 これらの結果から、糖尿病・肥満症によるFGF21-OXT系の破綻は肥満を助長することが明らかになった。
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