研究課題
Trimethylamine-N-oxide(TMAO)を含むコリン代謝物は心血管病のバイオマーカーとしての期待が高まっている。一方、日本人においてTMAOを豊富に含む魚の摂取を介したTMAOレベル増加が心血管病に寄与するかは未解明である。そこで私共は、「TMAOや他のカルニチン代謝物が日本人の頸動脈内膜中膜複合厚(Intima-media thickness: IMT)に関連する」と仮説を立て本研究を行った。TMAOに加えて、trimethyllysin (TML)、γButylbetain (γBB)、L-カルニチンに焦点を当て、LC/MS/MSシステムによる同時測定系を確立した。男性142人、女性222人から得られた空腹時採血検体で、上記物質の血漿中濃度を測定した。その結果、TMAOを除くすべての分子は女性に比し男性で有意に高値を示した。また興味深いことに、隠岐の島町と中山間地域である掛合町との比較したところ、TMAOとTMLは男女とも、隠岐の島町で有意な高値を示した。血中TMAO濃度は、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)と有意な正相関を示したことから、魚介類の摂取量に比例する可能性が考えられた。これは、血中TMAO濃度が肉類より魚介類摂取の影響を2倍以上強く受けるとする既報に合致した所見であった。測定値と動脈硬化指標との関連について重回帰分析を行ったところ、全体では、IMTとプラークスコア(PS)はTMLと負相関を示し、TMAOとの相関を認めなかった。女性では、IMT・PSは、L-カルニチンと正相関を認め、一方、男性ではいずれの代謝物も有意な相関を認めなかった。すなわち、コリン代謝物は日本人男性の動脈硬化指標とはならないこと、日本人女性では、年齢、高血圧とともにL-カルニチン高値が動脈硬化指標になりうることが示された。
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