研究課題/領域番号 |
19K11742
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
奥村 仙示 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (30322259)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メタボロミクス / 肝疾患 / 肝切除 / 栄養 / アミノ酸 / 脂肪酸 / 異化 / 代謝 |
研究実績の概要 |
肝硬変患者の栄養療法の開発に長年取り組んできた。分岐鎖アミノ酸(BCAA)は肝硬変患者の栄養治療で有効な栄養素である。しかし、その投与のタイミングや量についての報告は極めて少ない。近年メタボローム解析によって、これまで評価できなかった代謝物を測定できるようになってきた。 BCAAが生体の中で本当に上手く活用されたかは、筋肉の増加が最終的なアウトカムになるが、長期間の観察が必要であるうえ多くの要因が想定される。そのため、短期間で栄養状態を評価し食事内容を早期に修正できれば精度の高い栄養療法となる。 外科侵襲時は、グルコース不足によるたんぱく質異化の亢進やたんぱく質合成障害を特徴とする代謝変動がみられ、内因性のタンパク質源やエネルギー基質が減少する。特に、進行がん患者や消化器疾患患者では、術前から栄養障害をきたしている場合が多く、術前の中等度及び高度の栄養障害は、術後合併症の増加、ひいては予後の悪化につながる。栄養不良患者に対し術前から適切な栄養管理を行いたんぱく質異化を抑制することは、術後合併症発生率の低下や予後の改善に寄与するため、周術期の栄養管理は重要である。 そこで、BCAAの中間異化代謝物を評価することで、BCAAが上手く利用されたか短期的に評価できると考えた。BCAA中間異化代謝物であるC3アシルカルニチンやC5アシルカルニチンなどの測定行い、生体で異化されているか否かの評価指標や方法を検討し、臨床に活用できる新規の栄養検査の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、肝切除後のアミノ酸代謝変動が肝切除特異的な反応であるかを明らかにするため、肝・胃・大腸がん切除周術期の血中アミノ酸濃度変動を比較した。 対象は、肝切除群13例、胃切除群14例、大腸切除群10例の計37例とした。手術当日(pre)、術後3日目 (POD3)、7日目 (POD7) の早朝空腹時に採血を行い、血液生化学検査を行った。また、血漿を用いてアミノ酸濃度を、血清を用いてインスリン (IRI)、アシルカルニチン、3-ヒドロキシ酪酸 (3-HB)、3-ヒドロキシイソ酪酸 (3-HIB) 濃度を測定した。 分岐鎖アミノ酸 (BCAA) であるIsoleucine (Ile) とLeucine (Leu) は、POD3において大腸切除群に比し肝切除群で有意に低値を示した。また、芳香族アミノ酸 (AAA) であるPhenylalanine (Phe) は、肝切除群においてpreに比しPOD3及びPOD7で有意に上昇し、Tyrosine (Tyr) は、POD3において胃及び大腸切除群に比し肝切除群で有意に高値を示した。フィッシャー比 (BCAA/AAA) は、肝切除群においてpreに比しPOD3及びPOD7で有意に低下し、POD3及びPOD7において胃及び大腸切除群に比し有意に低値を示した。Valの異化中間産物である3-HIBは、肝及び胃切除群においてpreに比しPOD3で有意に上昇した。また、POD3において胃及び大腸切除群に比し肝切除群で有意に高値を示した。 肝切除群において術後Valの異化が亢進し、BCAAの必要量が増加した可能性が示唆された。よって、肝切除患者に対し術後早期から夜食療法 (late evening snack;LES) としてのBCAA投与が望ましいと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、採取したサンプリングの解析について、さらに注目すべき経路を抽出し、解析を行う。 BCAAの中で、バリンについて異化が起こったとき上昇するバイオマーカーを予測している。そのバイオマーカーが、肝、大腸、胃切除について、切除する臓器によって、バイオマーカーに差があるのか比較し、さらに変動のあった周囲の代謝物の情報を詳細に解析をすすめる予定である。解析には、文献、インフォマティックのソフトなど様々な方向からの解釈が必要であるが、これまでに培ってきた解析の経験を生かして解析をすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会が中止になったりweb開催となり、旅費の使用をしなかった。 次年度は、すでに採取したサンプルについて解析を継続して行っていく。その際、解析に必要なソフトや測定に関する消耗品を購入する。
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