研究課題
わが国の低出生体重児の占める割合は非常に高く、OECD諸国の27ヵ国の中でギリシャと並び最高である。低出生体重はその後のメタボリックシンドロームや精神疾患などの発症割合の上昇との関連が指摘され、このまま低出生体重児の増加が進めば将来爆発的な発症が起こりかねない。加えて、医療費増加や労働生産性低下など、経済的にも重要な公衆衛生上の問題である。先行研究では、出生前後の栄養素バランスの差異は、成長してからの健康に長期的な悪影響を与えることが示唆されている。近年、栄養素バランスの急激な変化の兆候が見られるが、この変化の第一世代及び次世代の健康状態への影響は十分明らかにされていない。本研究では、親世代のタンパク質の量と、タンパク質の質(動物性、植物性)が次世代のメタボエイジングをいかに制御するのか、胆汁酸・腸内細菌叢を中心としたメカニズムを軸とし、エピジェネティクス機構から解明し、わが国の低出生体重児およびその後の健康状態改善に寄与する知見を得ることを目的とする。本年度の概要は下記の通りである。1)親世代の栄養素バランスの違いによる次世代の影響を健康寿命の観点からも検討することの有効性が実験の結果より示唆されたため、次世代マウスの飼育を寿命まで継続しカプランマイヤー法による生存時間解析を行った。この結果、親世代の栄養素バランスの違いにより、標準食を与えられたマウスでは生存曲線に有意な差異が見られ、低タンパク質群で有意な寿命の延長が確認された。2)次に、次世代マウスの餌の種類を食事誘導性肥満食(60 kcal%脂肪)とし寿命の測定を行なった。この結果、標準食を与えられた場合と比較して逆の方向性が確認された。このことから、親世代の栄養素バランスのエピジェネティクスによる継承は次世代の栄養素バランスと相互連関し寿命を規定していることが明らかとなった。
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Obesity
巻: 31 ページ: 1038~1049
10.1002/oby.23705