研究課題/領域番号 |
19K11753
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
清瀬 千佳子 神奈川工科大学, 健康医療科学部, 教授 (50272745)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ビタミンE / δートコフェロール / 抗肥満作用 / 抗炎症作用 / 脂肪細胞 / 脂肪組織 |
研究実績の概要 |
本研究は日本人の生活習慣病の罹患率の上昇を抑制するために、肥満からの炎症誘導を抑える事が出来る食品成分を見出す事を目的とした。食品成分としてビタミンE同族体の1つであるδ-トコフェロールに着目し、その効果と作用機序を解明するため、令和元年より取り組んでいる。2年目になる令和2年度はコロナ禍による緊急事態宣言が発令された事もあり、研究の進捗は遅れた。その中で、昨年度報告した共培養系の研究において、共培養を行う事で上昇した炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6)をδ-トコフェロールが有意に低下させる事を報告した。そこで、令和2年度は、脂肪細胞の分化にどのような影響があるのか、PPARγの遺伝子発現を見た所、共培養で有意に低下していたことから、脂肪細胞の分化に炎症誘導が大きく関わる事が明らかになった。δ-トコフェロールは炎症誘導によるPPARγの遺伝子発現の低下を戻す傾向が見られたが、α-トコフェロールにはその効果はなかった。さらに、抗肥満の指標となるアディポネクチンの遺伝子発現も炎症により、有意に低下したものの、δ-トコフェロールの添加で戻す傾向が見られた。しかし、α-トコフェロールにはその効果は見られなかった。以上の結果より、δ-トコフェロールは炎症誘導により低下したアディポネクチンなどの抗肥満に関わる因子を回復する可能性が示唆された。一方で、PPARγのタンパク質発現を見た所、対照群、共培養群、α-トコフェロール添加群、δ-トコフェロール添加群の間で差が見られなかったことから、今後はタンパク質発現について培養条件も含めて検討を進めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度はコロナによる緊急事態宣言が発令された事で、大学への入構が禁止された時期があり、今後の研究予定に記載した高脂肪・高ショ糖食を長期間負荷する動物実験を行う事が出来なかった。今年度も長期間での検討は途中で断念せざるを得ない状況が起こる可能性を考慮し、別の方面から研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、昨年度実験が出来なかったin vivo実験を行いたいと考えている。本来なら、昨年度の研究計画を遂行したいと考えていたが、コロナ禍での3度目の緊急事態宣言が出されている(令和3年5月現在)状況と今後の見通しが立たない事から、研究内容を変更し、研究目的を解明するための計画を遂行したいと考えている。 これまでの報告より、ビタミンE同族体の中で、特にこれまでほとんど研究報告がなかったδ-トコフェロールに脂肪細胞に対する抗炎症効果がある可能性を示唆した。そこで、in vivoにおいても抗炎症作用があるかどうかについて検討したい。これまでの研究結果より、高脂肪・高ショ糖食を16週間負荷すると、その食生活の偏りにより、脂肪組織が肥大化した上に、炎症性サイトカイン(TNF-α)とケモカイン(MCP-1)が有意に上昇し、生活習慣による肥満モデル動物を構築する事に成功しているが、16週間という長期での飼育を行わなければならないため、現状を考えると実験の遂行を途中で断念せざるを得ない可能性が考えらえる。そこで、高脂肪・高ショ糖食でラットを一カ月飼育したのち、TNF-αを腹腔内に投与し、強制的に炎症を誘導する実験系でδ-トコフェロールの抗炎症作用について検討したいと考えている。餌の添加量は対照群、TNF-α群、α-トコフェロール群、δ-トコフェロール群にビタミンE欠乏にならないように餌1kgあたり50mgのα-トコフェロールを添加した上に、α-トコフェロール、δ-トコフェロールをそれぞれ800mg添加し、その効果について検討する。解剖はイソフルラン麻酔下にて行い、血液ならびに肝臓、各脂肪組織を採取し、炎症性サイトカインやケモカインの遺伝子発現について測定する。さらには脂肪組織を固定・凍結切片を作成し、免疫染色する事で、マクロファージの浸潤についても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として29296円生じたが、今年度は動物実験等を遂行する予定で、その購入費用として今年度の予算と一緒に使用したいと考えたため
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