研究課題/領域番号 |
19K11755
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
田中 清 神戸学院大学, 栄養学部, 教授 (90227132)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビタミンB12 / ビタミンB1 / 胃切除 / 心不全 / ビタミン不足 |
研究実績の概要 |
ビタミン欠乏により、脚気(ビタミンB1)やクル病(ビタミンD)などの疾患が起こるが、それより軽度の不足であっても、種々の疾患リスクを増加させる。ビタミン不足に関する研究は乏しく、そのほとんどがビタミンDに対するもので、Bビタミンに関する報告が乏しかったので、まずBビタミン不足の臨床的意義を研究した。 ビタミンB12の吸収には、胃が不可欠であり、胃切除後吸収障害がおこるが、肝臓に多量の蓄積があるため、実際に起こるのは数年後とされている。しかし胃切除術を受ける患者のほとんどは胃癌により、胃癌の多くは、萎縮性胃炎をベースに発症することから、より早期より、ビタミンB12欠乏が発症するとの仮説を立て、調査を行ったところ、術後早期・術前より、ビタミンB12欠乏者の割合が高かった。 経腸栄養療法を受けている患者を対象に調査を行ったところ、胃からの投与患者では、小腸からの投与患者に比べて、血清ビタミンB12濃度が低かった。小腸からの投与では、誤嚥リスクが低いというメリットがあるものの、ビタミンB12吸収障害を起こしやすいという問題点を明らかにした。 以前に高齢者施設入所者を対象に調査において、脚気を起こすほどの重症のビタミンB1欠乏ではなくても、高齢者心不全のリスクとなる可能性を示した。そこで循環器内科受診患者を対象に調査を行ったところ、種々の交絡因子にて補正後も、血清ビタミンB1濃度は、心不全の鋭敏な指標である血漿BNPに対する負の寄与因子であった。またループ利尿薬使用者では、血清ビタミンB1濃度が低く、ビタミンB1不足→心不全→利尿薬使用によりさらにビタミンB1不足という、悪循環が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記概要に述べたように、ビタミンB12は胃切除数年後より早期から発症すること、ビタミンB1不足が高齢者心不全のリスクとなることという、新規性のある結果を得ることができ、学会にて発表後、現在論文執筆中であり、おおむね順当な進捗状況と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ビタミンB12については、胃内視鏡検査を受けた患者を対象に調査を行い、胃癌による胃切除に至らなくても、萎縮性胃炎のみでも、ビタミンB12欠乏/不足となる可能性を検討する。 各種病態における、ビタミン栄養状態を検討すべく、糖尿病患者・甲状腺疾患患者における、ビタミン栄養状態の調査を開始した。
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次年度使用額が生じた理由 |
その他として、論文掲載料をかなりの金額見込んでいたが、予想外に掲載料が安い雑誌に採択されたため、若干の余剰を生じたものである。次年度、主に物品費・謝金など(血液検査費用)として支出の見込みである。
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