研究課題/領域番号 |
19K11755
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
田中 清 神戸学院大学, 栄養学部, 教授 (90227132)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビタミン不足 / ビタミンB1 / ビタミンD / 社会的意義 |
研究実績の概要 |
(1)実地調査・(2)国民健康栄養調査の2次解析・(3)社会的意義に関する文献調査を行った (1)実地調査結果としては、①施設入居高齢者を対象としたコホート研究において、ビタミンD不足は上気道感染症発症のリスクとなること、②70歳以上の高齢者を対象に、ビタミンE栄養状態は動脈硬化の危険因子数と関連すること、③重症心身障害者においてビタミンK1投与が骨代謝指標を改善することを報告した。 (2)国民健康栄養調査の2次解析において、以下の点を明らかにした。①喫煙者はビタミンC・葉酸・カロテノイド摂取が少なく、ビタミンC・葉酸の摂取量が推定平均必要量(EAR)未満者(すなわち不足者)の割合が高かった。また喫煙者は飲酒者の割合が高く、65歳以上で自分の歯が20本未満者の割合が高かった。喫煙は強い酸化ストレスであり、食事摂取基準において、喫煙者は非喫煙者以上のビタミンC摂取が推奨されているが、実際には抗酸化ビタミンの摂取が少なく、また併存する過剰飲酒による臨床検査値異常や歯周病を持つ例が多いことが明らかとなった。②水溶性ビタミン摂取量EAR未満者の割合は高く(特にビタミンB1・ビタミンC)、高齢者において重回帰分析の結果、複数のビタミン摂取量EAR未満は、骨格筋指数に対する負の寄与因子であることを示した。 (3)近年多くの骨粗鬆症治療薬が開発されており、ビタミンDの骨折予防効果は薬剤より小さいが、かかる費用が少ない。ビタミンD介入による骨折予防効果に関する既報をまとめて、これが費用対効果に優れ、社会的に大きな意義を持つものであることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症蔓延に伴い、共同研究を予定していた病院や高齢者施設に立ち入っての調査研究が困難となり、実地調査の遂行が当初予定より遅れている。次年度新型コロナの感染状況が改善次第、予定していた調査研究を再開する予定であるが、行えなかった実地調査を補うものとして、今年度病院や高齢者施設に行かずに行える研究として、国民健康栄養調査の2次解析および、ビタミン不足の社会的意義に関する研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナの感染状況が改善次第、当初から予定していた、病院・高齢者施設・健診施設における調査を再開する。具体的テーマとしては、①人間ドック受診者におけるビタミンB12栄養状態と胃粘膜萎縮度の関連、②甲状腺疾患におけるビタミン栄養状態と病態との関連を予定している。またそれに加えて、国民健康栄養調査の2次解析、ビタミン不足の社会的意義に関する研究も、引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症のため、病院や高齢者施設における実地調査を行うことができず、今年度はその代替として、国民健康調査データの2次解析や社会的意義に関する文献調査を中心に行ったが、これらは特段の支出を伴うことなく遂行できたためである。
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