研究課題
本研究では、老化に伴う心血管病の発症から重症化に至る過程での心血管系の細胞間ネットワーク機構の解明を目指す。そのために、血管内皮細胞の老化に伴って増加する糖鎖関連分泌因子であるへパラン硫酸脱硫酸化酵素の作用機序について明らかにすることを目的としている。令和元年度では、まず、autocrine/paracrineな内皮細胞への作用として、細胞老化には関与しないことを見出した。一方、酸化ストレスに伴い増加する内皮間葉転換には作用していることを見出した。シグナルへの影響については本年度検証する予定である。SASP抑制剤として知られるラパマイシンによる影響も検討した。へパラン硫酸脱硫酸化酵素の増加は抑制されなかったが、酸化ストレスによる細胞老化とSASPについてはラパマイシンによる抑制効果が見られたが、逆に内皮間葉転換が促進されることを見出し、論文発表を行った。へパラン硫酸脱硫酸化酵素はSASP とは別経路で制御されていることが示唆された。また、へパラン硫酸脱硫酸化酵素の作用する相手としての平滑筋細胞について解析を進めた。細胞老化に伴うガングリオシドの発現様式が内皮細胞とは異なることや、へパラン硫酸脱硫酸化酵素の発現性も内皮細胞とは異なることを見出した。さらに、平滑筋細胞のswitching過程でのガングリオシドの発現性も検討し、細胞老化と異なる発現様式であることも見出した。平滑筋細胞のswitching過程で働くシグナルの制御に老化内皮細胞由来のへパラン硫酸脱硫酸化酵素が作用しうるか今年度検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画にある①血管内皮細胞に対する作用についてでは、内皮機能への影響についての検証は進まなかったが、ガングリオシドとの相互作用についてはある程度は検討を行っている。②の平滑筋細胞に対する作用についてでは、まず平滑筋細胞の特性(ガングリオシドの発現性、TGFやPDGFに対する反応性など)についての結果を得た。2021年度の計画につながるような結果を得ているのでおおむね順調といえる。
期間内に研究目的を遂行させるため、今後は以下のような推進方策で研究を行う。研究計画に記載した、①血管内皮細胞に対する作用についてにおいては、内皮機能への影響について検証するとともに、ガングリオシドとの相互作用についても引き続き検証していく。また、研究計画に記載した、②の平滑筋細胞に対する作用についてにおいては、平滑筋細胞の増殖や遊走、switchingへの作用について検証していく。
計画的に予算の使用を行なった結果、残額が生じた。今年度は最終年度にあたるため、計画的に全予算を使用していく。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件)
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 6775
10.1038/s41598-021-86028-1
Heliyon
巻: 7 ページ: e06182~e06182
10.1016/j.heliyon.2021.e06182
Cancers
巻: 12 ページ: 2976~2976
10.3390/cancers12102976
https://www.tmghig.jp/research/release/2021/0326.html
https://www.tmghig.jp/research/release/2020/1019.html
https://www.tmghig.jp/research/release/2019/1225-2.html