食事誘発性熱産生の亢進により、エネルギー消費の増加が期待できる。マウスにスクロースを投与したところ、コントロール食摂取群に比べ、食事誘発性熱産生の有意な増加がみられた。食事誘発性熱産生には褐色脂肪組織の活性化、ミトコンドリア脱共役タンパク質UCP1が重要な役割を果たしていることが知られているが、UCP1mRNA発現はコントロール群とスクロース摂取群で差は見られなかった。そこで、褐色脂肪組織における代謝産物の解析を行なった結果、糖質代謝経路において大きな変化があることを明らかにした。 脂肪酸のβ酸化を制御する核内転写因子であるPPARαノックアウトマウスにスクロースを投与し、脂肪肝発症について調べた結果、野生型マウスでも肝臓脂肪蓄積が観察されたが、PPARαノックアウトマウスはさらなる肝臓脂肪蓄積がみられた。PPARαノックアウトマウスでは、PPARαに制御される遺伝子の発現が少なく、SREBP-1cに制御される脂肪酸合成に関わる遺伝子の発現が同程度であったためと考えられた。また、PPARαノックアウトマウスの普通食摂取群では、オスでは野生型マウスに比べて約5倍肝臓に脂肪が蓄積したのに対し、メスでは増えたものの2倍程度で肝臓脂肪蓄積量に雌雄差が見られた。そこで、解析した結果、オスではPPARαが欠損している代わりにPPARγが働き、PPARα下流の遺伝子発現調節を行なっているが、メスではその働きが弱いことを明らかにした。PPARγは脂肪合成経路の調節が主要な働きであり、それゆえオスでは肝臓脂肪蓄積が多くなっていることがわかった。一方、メスではエストラジオールの働きがあるため野生型マウスでも元来PPARαの量が少なくてすんでおり、遺伝子欠損してもその影響がオスほどないためPPARαノックアウトマウスの肝臓脂肪蓄積量はオスほど野生型マウスに対して差がみられないものと推察された。
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