研究実績の概要 |
1. 基礎実験について:2019, 2020年度に実施した動物実験結果をまとめ、Sulforaphane glucosinolate (SGS)投与によりDextran Sodium Sulfate (DSS)により惹起されるマウス大腸炎が軽減されること、またその機序として、SGSによるマウス大腸粘膜の酸化ストレス応答能強化作用、及び腸内細菌叢に対する影響が炎症抑制に関与することが示唆された。以上の成績は2022年5月に開催された第75回日本酸化ストレス学会にて発表した。 2. 臨床試験について:上記のマウスの基礎実験の成績を参考に、SGS含有食品、ブロッコリースプラウトを潰瘍性大腸炎患者に投与する臨床介入試験を開始した。具体的には2020年8月に本研究の実施計画書を参加施設である日立総合病院筑波学園病院、筑波セントラル総合クリニック、及び、大森敏秀胃腸科クリニックにおける倫理委員会で承認された後、同年10月より各施設において二重盲検法によるスプラウトの介入試験を開始した。2022年度までに、合計27例(目標50例の54%)のエントリーが完了した。副反応などによる脱落症例はなく、2023年2月にキーオープンした。その結果、BS投与群で便中カルプロテクチンの有意な低下が認められた。特にSGS含有食品投与前のカルプロテクチンが高値を呈した症例においてこの傾向は顕著に認められた。腸内細菌叢に及ぼす影響については、SGS投与群で酪酸産生菌であるビフィダス菌の有意な増加が認められた。この結果から、SGS含有食品の摂取により潰瘍性大腸炎の軽減効果が得られる可能性が示唆された。
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