研究課題
本研究の目的は高齢化社会に飛躍的に増加すると予想される心不全、特に現在病態が明らかではないHFpEFのモデル動物となりうるProgranulin (PGRN)-knockout (KO)マウスを用いて,心臓における老化促進とそれに伴う心肥大、さらには負荷により引き起こされる心不全の病態を明らかにして、加齢に伴い増加する心不全の新たな治療ターゲットを見出すことである。PGRN-KOマウスは血圧上昇を伴わずに、老化に伴い、心肥大、心不全を発症するこれまでに存在しなかったHFpEFモデルマウスになる可能性があり、極めて独自性は高いものと思われる。我々は心肥大を引き起こすシグナルがβ-cateninであり、その活性化がPGRN欠損により起こっていることをin vivo、in vitroの両面で証明し、論文にアクセプトされた(J Mol Cell Cardiol. 2020 Jan;138:197-211. doi: 10.1016/j.yjmcc.2019.12.009.)。この中でPGRN-KOマウスにおいてコントロールマウスに比較して加齢性の心肥大とそれに伴う心不全が惹起され、また大動脈縮窄モデルにおいてもPGRN-KOマウスは対照マウスと比較して有意な繊維化を伴う心肥大と心不全を認めた。また、これらのPGRN-KOマウスでは、C1qやβ-cateninの心臓での発現が亢進していることも見出した。そこでin-vitroの系で、これらの発現亢進と心肥大の因果関係を調べたところ、C1q-induced β-catenin activationによってPGRN-KOマウスの心肥大を少なくとも起こしていることを示した。 また、PGRN-KOマウスの加齢性心肥大はC1qやβ-cateninを阻害することによって心肥大を減弱させることも見出した。
3: やや遅れている
昨年来、論文投稿し、アクセプト(J Mol Cell Cardiol. 2020 Jan;138:197-211. doi: 10.1016/j.yjmcc.2019.12.009.)されるまでに、リバイズで多くの追加実験を要求され、そこに多くの時間を割かなければいけなかったことが大きな理由である。
前述のリバイズで追加実験をしている際にこれまで気づかなかった知見を見出したので、新たに進めていくとともに、HFpEF心筋生検サンプルでのPGRNやリポフスチンと心エコーなどのmodalityで得られた心肥大や拡張障害などとの相関について検討する予定である。
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Journal of Molecular and Cellular Cardiology
巻: 138 ページ: 197-211
10.1016/j.yjmcc.2019.12.009