研究課題/領域番号 |
19K11772
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
斉藤 麻希 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (40365185)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / モノクロタリン / インドール類縁体 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
肺高血圧症は肺動脈圧が上昇する病態であり、延いては右心不全をもたらす進行性の難病である。近年は、優れた肺動脈拡張薬が上市され、従前に比しその生命予後は格段に改善されている。しかし、例えば結合組織病等の慢性炎症性疾患と合併する場合、いまだ予後は必ずしも芳しくない。このような現状に鑑み、慢性炎症を伴う肺高血圧症の予後改善を視野に本研究を立案した。 慢性炎症性疾患に合併する肺高血圧症の予後を左右する因子として慢性的に存在する炎症に着眼し、炎症を収束させる効果をもつ化合物が炎症を伴う肺高血圧を抑制しうる可能性について検討することとした。研究協力者が見出したある種のインドール類縁体が強力な腫瘍形成抑制効果および抗炎症効果をもつという知見から、インドール類縁体 Compd.A および Compd.B が肺高血圧症予後改善薬の候補となり得るかを調べた。 SD 系ラット(5週齢)を平均体重にバラツキが生じないよう4匹ずつ6群に分け、健常群、肺高血圧+溶媒群、肺高血圧+Compd.A 0.3 mg/kg群、肺高血圧+Compd.A 1 mg/kg群、肺高血圧+Compd.B 3 mg/kg群、および肺高血圧+Compd.B 10 mg/kg群とした。健常群には生理食塩水を、肺高血圧誘発群にはモノクロタリン (60 mg/kg) を単回皮下投与して2週間飼養し肺高血圧症を誘導した。モノクロタリン投与14日目から、1日1回のインドール類縁体皮下投与を開始し、経過を観察した。なお、健常群および肺高血圧+溶媒群にはポリエチレングリコール400 を投与した。 観察の結果、肺高血圧+溶媒群の生存期間中央値は 22 日であった。また、Compd.A 0.3 および 1 mg/kg、 Compd.B 3 および 10 mg/kg 群の生存期間中央値はそれぞれ、31、23、47、および26日であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は研究計画のうち項目1「インドール類縁体が心臓線維芽細胞およびマクロファージの炎症性変化に関する培養細胞を用いた検討」を行う予定であったが、細胞培養用インキュベータの使用状況から、項目3「モノクロタリン-肺高血圧モデルラットを用いた生存解析」から先に実施した。適当な溶媒の探索、投与量や投与経路に関する予備検討に想定よりも時間が掛かり、十分な例数をもった結果がまだ得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の結果から、Compd.A および Compd.B の投与が肺高血圧モデルラットの生存期間を延長しうることが示された。この結果を受け、2020年度以降は肺高血圧ラットの治療実験に関して、用量や投与開始時期・期間などの検討を更に進める。併せて、心肺組織を摘出して心線維化や肺の炎症性変化について組織化学的検討を進めたいところであるが、現状を鑑み組織染色の受託サービスの利用も視野に入れる。 動物実験と並行して細胞培養の環境を整え、心線維化や免疫細胞の活性に対するインドール類縁体の効果について、培養細胞を用いた検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、2019年度に培養細胞を用いた検討を行う予定であったが、実験動物を用いた検討を前倒しで行ったため、初年度に計上したヒト心臓線維芽細胞用特殊培地、血清、実験用各種酵素等の比較的高価な消耗品の購入量が少なかったこと、学術集会への参加を見送ったことにより旅費が生じなかったことなどが次年度使用額を生じた理由と考えられる。培養細胞を用いた検討は2020年度に行う予定であることから、特殊培地等の単価の高い消耗品の購入が必要となるため、2020年度申請額に加えて前年度からの繰越金の使用が見込まれる。
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