研究課題
高齢心血管疾患患者は肉体的、精神的、社会的脆弱性を包括する概念であるフレイルの状態にある。申請者らは、若年患者と異なり高齢心血管患者においてはフレイルの一因となる低栄養状態こそ予後不良因子であることを報告している。本研究では、多施設前向き介入研究により「ω-6系多価脂肪酸ならびに脂肪酸代謝関連物質への介入が、心血管疾患患者の予後を改善するか」を解明することを目的とする。今年度はCoronary Intendive Care Unit (CICU)に入室した種々の心血管疾患患者のデータベース作成、血液検体等の保存、解析を進めているが、コロナ禍において進捗が遅れていることは否めない。その中で、低栄養高齢女性がStabford A型大動脈解離のリスクであることを見出し学会発表(第85回日本循環器学会)論文投稿中である。また昨年より心血管疾患患者ににおける低栄養とせん妄、認知機能の関連について研究の領域を広げているが、そのデータベースの作成の中で心停止からの蘇生患者における脳機能改善に早期の心肺蘇生が重要であることを見出し学会発表(第86回日本循環器学会)論文投稿中である。また本研究に付随した成果として、作成したデータベースで得られた症例から、コロナ患者に併発した心筋梗塞症例のケースレポート(Clinical Case Reports 2021)、糖尿病患者の皮膚で測定した糖最終産物と心血管イベントの関連について(Cadiovascular Diabetology 2021)報告している。
3: やや遅れている
CICUでのデータベース作成、血液検体保存、脂肪酸代謝に関わる長鎖脂肪酸等の各種測定は順調に行われている。しかしながらコロナ禍により疾患患者の入院制限等により、研究参加者自体が減っているのが現状である。その中でもMRSによる心筋内中性脂肪測定等の特殊な検査のリクルートには特に難渋している。測定に関わる大学院生、スタッフが増加したことにより、今後進捗していくと考えている。また現在、症例を急性大動脈疾患患者、心停止患者に拡張して調査を行っており、それぞれ学会発表を行った、今後論文化を行っていく予定である。
臨床研究に関しては、予定どおりCICU入院患者においてω6系脂肪酸代謝に関わる栄養素の測定を継続、解析をしていく。当初の研究目的では、これらのω6系脂肪酸及びそれに関わる栄養素を是正する食事プログラムを作成することとなっているが、それに加え心臓リハビリテーションがこれらの栄養素にどのような影響を与えるかも引き続き考察する。また現在、急性心血管疾患患者の予後規定因子となりうるせん妄発症と脂肪酸バランスを含んだ栄養状態に関する調査も行っており、せん妄発症が治療介入効果のサロゲートマーカーに成り得るかを検討する。さらに症例を急性大動脈疾患患者、心停止患者に拡張して調査を行っている。
当該年度に関しては、科学研究費の他に奨学寄付金を取得できたため、当初科学研究費から捻出する予定であった物品購入あてることが可能となった。またコロナ禍のため、学会等への出張が減ったこともありその額に相当する繰越金が発生した。(使用計画)物品費、人件費に関しては、研究協力を行う大学院生、スタッフのさらなる増員が決定したため、統計解析用PC、統計解析ソフトの追加購入を行い、データベース作成補助者に対する人件費に使用する予定である。 また心不全症例のデータ取得のため、ポータブルエコーの購入を予定している。旅費に関しては本年度も不透明ではあるが、米国心臓病学会、欧州心臓病学会に参加予定であり、その渡航費用に当てる予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Clinical Case Reports
巻: 9 ページ: e04785
10.1002/ccr3.4785
Cardiovascular Diabetology
巻: 20 ページ: 208
10.1186/s12933-021-01398-0