研究課題/領域番号 |
19K11776
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
濱田 浩一 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (00343070)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 細胞分化 / 脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
生活習慣病は、動脈硬化など心疾患のリスクが著しく増大した状態であり、加えて腹部周囲径を考慮したものを“メタボリックシンドローム”と定義している。メタボリックシンドローム発症の背景には、過栄養や運動不足による肥満、すなわち脂肪組織における脂肪細胞数の増加と肥大化、さらにアディポカイン産生異常が原因である。従って、脂肪細胞の大きさ或いはその数を適切に制御できれば、肥満の解消につながり、さらには生活習慣病克服の鍵となる。 我々は、IRBITという分子の生理機能を解明する過程で、IRBIT KOマウスが、体重低下・脂肪組織の減少・個々の脂肪細胞の矮小化・血中TNFα濃度の低下を偶然発見した。TNFαは「悪玉」脂肪細胞から分泌されることから、こうした所見は、IRBITが脂肪細胞の大きさや数を適切に調節できる分子であることを強く示唆している。そこで本研究では、IRBITがいかに脂肪細胞の数や大きさを調節しうるのかを、分子レベルで解明することを目的とする。そして脂肪細胞の「大きさ・数」を適切に制御する方法論を提案したい。これは、IRBITを軸にした全く新しい方法論になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では脂肪細胞の数・大きさ・アディポカイン産生における新規制御因子IRBITの機能解明を計画している。令和元年度は以下のことを明らかにした。 ①IRBIT (IP3 receptor binding protein released with inositol1,4,5-trisphosphate)ノックアウト(KO)マウスは、体重低下・内臓脂肪組織量が減少していること。②さらに個々の脂肪細胞のサイズの矮小化していることを組織解析より確認している。③またIRBIT KOマウスの、血中のサイトカイン濃度を調べたところ、TNFα量が低値を示していた。④In vitro 脂肪細胞分化誘導システムである3T3-L1細胞を用いて、siRNAによりIRBITのノックダウンを行い分化誘導したところ、脂肪細胞分化が顕著に抑制されていた。
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今後の研究の推進方策 |
① IRBIT KOマウス由来線維芽細胞を調製し野生型と比較して脂肪細胞数や個々の細胞の大きさに差があるかを検討する。 ② In vitro 脂肪細胞分化システムである3T3-L1細胞を用いて脂肪細胞分化マーカーの発現パターンをReal-time PCRおよびウエスタンブロットにより検討を行う。 ③ IRBIT過剰発現における脂肪細胞分化:IRBIT過剰発現における脂肪細胞分化能の変化を検討するために、3T3-L1細胞にエレクトロポレーション法およびレンチウイルスによる遺伝子導入を行い、脂肪細胞分化誘導能および脂肪細胞分化マーカーの発現量の変化を検討する。 ④ IRBITによる脂肪細胞数制御機構の解析:脂肪細胞数の制御にはMCEと呼ばれている細胞増殖機構が存在している。そこで、IRBITがMCEに関与しているのかを、IRBIT ノックダウン(KD) 3T3-L1細胞を脂肪細胞へ分化させ、トリパンブルー排除法により細胞数の増加を計測すると共に、フローサイトメトリーにより細胞周期の変化を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度にIRBITによる脂肪細胞分化制御の分子メカニズムに関して日本薬学会で発表する予定であったが、新型コロナウイルスの影響のため学会自体が中止になった。次年度は発表することとし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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